【外国人労働者の増加で職場・生活はどう変わる?】第20回:懸念すべきは、外国人から日本の雇用を守ることではなく、自立できない外国人によって増える社会保障だ

新しい働き方事例
2017年08月10日

今回は、外国人労働者の受け入れの際にデメリットとされている「日本人の雇用が奪われる」ことに関して考えていこうと思います。


前々回、「外国人は治安を悪くするのか?」というテーマを取り上げました。その際「外国人が治安を悪くするのではなく不法滞在している外国人が犯罪に手を染めるのでは」という考えをお伝えしました。


それと同じように、「外国人が日本人の雇用を奪う」と懸念する前に考えるべきことがあるのではないかと思います。


たしかに、労働人口(供給)が雇用(需要)を上回ったら失業者が増えます。外国人労働者が「日本人が就く予定だったポジション」を手にしたらそのぶん日本人の仕事がなくなる、という考えは一理あるように思えます。


ですが、それは本当に「外国人労働者受け入れのデメリット」として心配すべきことなのでしょうか。


外国人労働者の増加→日本人は路頭に迷う?

日本での採用活動はほとんどの場合、「日本人」と「それ以外」に分けられています。集団面接の際、日本人以外の求職者に出会ったことがある方はほとんどいないでしょう。


それは企業は大前提として「日本人」を採用しており、日本人では対応がむずかしいと考えられる仕事の対応のために、外国人を外国人枠で採用しているからです。たとえ日本で暮らす外国人労働者が多くなったからといって、就職活動する学生と外国人がおなじ土俵に立つことは、まずありえないでしょう。


「外国人を積極的に採用したい」という企業もありますが、だからといって「日本人を採用しない」という日本企業はごく稀です。日本人と外国人が同じ採用枠で争うとしたら、母国語である日本語を話せる日本人の方が、むしろ有利になります。


さらに、日本では就労ビザの取得が容易ではありません。「外国人労働者が増えてきた」とはいえ、ふらりと日本にやってきて仕事を見つけて日本に滞在する、というのは実質とてもむずかしいのです。


シェンゲン協定のように移動の自由を認めれば日本人の雇用は脅かされるでしょう。ですが外国人労働者の受け入れを積極化したからといって、すぐに多くの日本人が路頭に迷うということないと思われます。


外国人を悪者にするのは筋違い

具体的に「外国人に日本人の雇用が奪われる」状況を考えると、2つのパターンが想定できます。


まずは、「日本人より優れた外国人労働者が現れて日本人が就職できない」こと。優秀な人材が海外からやって来るため、日本人の就職がむずかしくなるという場合です。


ですがそれは、「優秀な外国人労働者が集まる国である」ことが大前提です。日本の労働環境の劣悪さは世界でも有名なので、あえて日本にやって来る「優秀な人材」は限られるでしょう。また、外国人との競合に勝ちたければ、日本人が優秀な人材になればいいだけの話です。


もうひとつのパターンは、語学力や専門知識が必要ない単純労働を外国人が担うことです。その場合は「賃金の安さ」が求められるため、日本人よりも搾取しやすい外国人労働者が選ばれる可能性が高いでしょう。この場合の問題は「日本人の雇用口確保」ではなく、「労働者を搾取する経営者」です。つまり、労働者の国籍関係なく取り組まなくてはいけないテーマなのです。


どちらのパターンにせよ、「外国人労働者が日本の労働市場を破壊する」と外国人を悪者にするのは筋違いではないでしょうか。


心配すべきよりは雇用より社会的支出

ここまで「外国人労働者に仕事をとられるのか」について考えてきましたが、日本が考えなくてはいけないことは、実はその「先」にあると思っています。それは、外国人労働者のために必要になる社会的支出です。


EUの盟主として多くの外国人労働者を受け入れている、ドイツの例を挙げてみましょう。2015年のドイツの労働市場は好調でした。外国人労働者に関してもそれは同じで、雇用率は上昇し失業率は低下しました。ですが、「例外」もありました。


好調な労働市場―難民受け入れの影響はこれから』では、ブルガリアとルーマニアからの移住者の失業率が高く、4割以上が低所得を理由に社会保障を受けていることが指摘されています。


2014年1月にブルガリアとルーマニアはEUに加盟して7年を超えたので、ドイツへの移動と就労の制限が解除されました。そのため多くの移住者がドイツへ渡ったのですが、雇用先や収入を確保できなかった人が多かったのです。


日本はこのような「自由な移動と就労」を基本的には認めていませんし、地理的なことを考えても、これからもEU諸国のような移動の自由は認めないでしょう。


ですが外国人労働者を積極的に受け入れる、つまり規制を緩和することによって、ドイツで起こっていることと同じように、仕事を確保できず収入が少ない外国人労働者が現れる可能性は非常に高いと言えます。


そう考えると、日本が懸念すべきなのは外国人のせいで日本人の働き口がなくなることよりも、自立できない外国人労働者への社会保障費ではないでしょうか。


事実、2017年8月現在現職の自民党議員片山さつき氏は、外国人の生活保護受給に対して疑問を呈しています。(参考:『外国人への生活保護、日本人より高い支給率...片山さつき氏が問題提起』)


生活保護だけに限らず、失業したり仕事していても経済的に困窮している外国人には、公的支援が必要になります。日本に滞在している外国人労働者の配偶者のなかには、日本語も話せず職業的技術もなく支援を必要としている人もいます。多くの外国人労働者がしっかりと自活しているのは事実ですが、そうでない人もいるのです。


日本人の雇用を守ることも大切ですが、それよりも、公的支援を必要とする外国人労働者(外国人労働者として来日した人)をどう扱うかを議論する方が現実的ではないでしょうか。


取材・記事制作/雨宮 紫苑


ビジネスノマドジャーナル編集部
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