【イクボスのススメ】第9回:リクルート社員の成長は実は受け身型

新しい働き方ブログ
2017年08月09日


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この連載もいよいよ終盤戦ですが、今回は「成長のきっかけ」というものについて考えてみたいと思います。この切り口は珍しいかもしれません。私は人事として、人材エージェントとして、10年以上「人のキャリア」というものに向き合ってきました。20代の人が会社を辞める理由、転職先を選ぶ理由として、「人間関係」と並んで多い理由が「成長・やりがい」です。つまり、成長という体験(エクスペリエンス)を若いときに経験したい、しなくてはいけないと思っている人が結構多いのですが、これは健全な危機感だと思います。


成長体験はどうしたら経験できるのか

仕事経験を通じた成長体験の研究・調査はいろいろあるのですが、2001年に公益社団法人関西経済連合会で行われた「一皮むけた経験」調査や、リクルートワークスが実施した経営者の成長体験のインタビューなどが代表的です。その中で成長体験として多くの方が挙げられていたのは「新規事業などゼロからの立ち上げ」、「海外経験」、「悲惨な経験(修羅場経験)」、「昇進・昇格・配置などの環境の変化」といった内容です。実際、長く人事、採用の世界で仕事をしてきましたが、実感値としても近いところだと思います。


本題はここからなのですが、この成長体験というものはどうしたら経験できるのかということです。言い方を変えると、企業にとってはこの「成長体験」を積ませてあげることができれば、従業員にとって魅力的な会社になるということなので、企業側にとっても強い武器になるわけです。もちろん、正解は一つではないと思うのですが、上記に挙がっている内容を見ても、環境変化や新しいチャレンジなど、変化対応したことによって成長体験は生まれています。私も人事として、組織長として、常に「どこに行っても通用する人になろう!そのためには変化対応力が必要だ」ってことを口酸っぱく言っていましたが、もはや会社が一生守ってくれる時代でもありません。自分のキャリアは自分で作っていかなければならないのです。


リクルート社員の成長は実は受け身型

成長体験は変化対応していくことで出来てくるとお話しさせて頂きました。では、変化というのは誰でも意識すれば簡単にできるかというとそうではありません。会社・組織も、従業員個人も相当意識しないと変化なんてできません。だからこそ、変化には価値があるというわけです。


リクルートには「卒業文化」という言葉があります。60年近くの歴史がある大手企業で、定年退職者が一桁しかいないというのは珍しい会社だと思いますし、卒業といっても退職だけではなく、人事異動(部署卒業)が激しいことでも有名です。なんで、こんな生産性も悪く、お客様にもご迷惑をおかけしてしまうことを、お金も、時間も掛けてやるのかというと、「変化」で人を育てる、事業を育てるということを意図的にやっている会社だからです。当然ながら、経験豊富な人材が卒業するということは、短期的には現場にとっては大変なことですが、それ以上に、その抜けた穴(役割)を使って、抜擢して人を引き上げることで人を育てたり、前任者がいないことで新しい発想で事業を変革していくといったことを良しとする会社です。


ここで面白いことに気づきます。リクルートという会社は外部の方からは、自律自走できる社員が揃っていると仰って頂くことが多いのですが、実際は社員がゼロから自律自走しているというより、成長の「きっかけ」が会社や上司から降りてくることが圧倒的に多いのです。ちなみに私が以前、大学院の研究論文を書く際に取ったアンケートでは、リクルート社員は成長のきっかけは「望んでいない環境変化」と「上司」が圧倒的に高く、成長のきっかけが勝手に降ってくるのに対し、その他一般企業の成長のきっかけは「自ら望んだ環境変化」と「自らの意志」というのが高く、自ら動きださないと成長のきっかけはやってこないということでした。これは意外な結果のように見えますが、それくらいリクルートという会社が「変化で人を育てる」ということを意識的に仕組化してやっているというのが分かって頂けるかなと思います。


※引用:『20代の成長体験における「きっかけ」の考察』(2011佐藤雄佑)



成長するのは本人、きっかけを作るのが上司の役割

成長体験というのは本人の変化対応経験なので、本人が経験するしかありません。いくら勉強したり、本を読んだりしても成長体験は積めません。だからこそ、会社、組織として、従業員に「成長体験のきっかけ」をプレゼントするということはとても素敵なことだと思っています。また、そういったことが意図的にできる会社には優秀な人材が集まってきますし、人も育ちます。そこで一番重要になるのが上司の存在です。この連載においても、上司が組織の半径5メートルを作るということをお話しさせて頂きましたが、上司が社員の成長体験のきっかけを作ることが出来れば、メンバーのやりがいは確実に高まってくるでしょう。


まとめ

今回は「成長のきっかけ」という切り口で、上司の役割についてお話しさせて頂きました。今回は成長体験に絞ってお話ししましたが、昨今は広い意味で、エンプロイーエクスペリエンスなんて言葉も出てきており、いかに会社、上司が従業員の「仕事体験」を作っていけるかがロイヤリティやモチベーション、そしてパフォーマンスにつながってくるのではと思います。


記事制作:
株式会社ミライフ 代表取締役社長 佐藤 雄佑


佐藤 雄佑
新卒でベルシステム24入社。マーケティングの仕事に従事。そこで「やっぱり最後は人」だと思いリクルートへ。リクルートでは営業、支社長、人事GM、エグゼクティブコンサルタントなどを歴任。MVP、MVG(グループ表彰)などの表彰多数受賞。リクルートホールディングス体制構築時(2012)には人事GMとして、リクルートグループ(現リクルートキャリア)の分社・統合のプロジェクトを推進。子供が生まれた時には、半年間の男性育休を取得し、主夫を経験。2016年、株式会社ミライフ設立。

ビジネスノマドジャーナル編集部
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