【世界の働き方事情】第24回(最終回):ダンピング競争を拒んだデンマークのスタートアップ

知見・スキル
2017年08月07日

世界中で多くのスタートアップが急成長を続ける中、市場競争を勝ち抜くためには、ますますユニークなアイデアが必要になってきています。デンマークでもそれは同じこと。ビジネスで成功するためには、時間と忍耐と膨大なインサイトが必要です。


最近新たに立ち上げられたデンマークのスタートアップHilfrは、イノベーションを中核に、成功につながる独創的なコンセプトを思いつきました。
Hilfrは従業員を雇用する企業ではありません。清掃サービスを提供したい人と、清掃人を探している人とを結ぶプラットフォームです。デンマークには、このようなサービスを提供する企業は他にも数多くありますが、Hilfrが他と異なるのは、清掃アシスタントに、競争力ある賃金を確保することにコミットしているところです。このような外注サービスではとかく労働力の買いたたきが起こりがちなのは、日本のクラウドサービスにも見られることですが、同社は賃金を低く抑えて競争力をつけようとする考え方を拒否しています。


同社が生まれた背景

質がよく、競争力のある清掃サービスの不足に苛立っていたニール・マルティン・アンデルセンさんとそれに賛同した仲間が集まって、Hilfrのアイデアは作られました。
清掃の仕事を探していた賛同者の一人は「ヤミ仕事」しか見つけることができず、清掃サービスを探していた賛同者は、既存の清掃会社に依頼すると高額のサービス料を請求されたり、個人の家の掃除はしないと断られたりしていたのです。


Hilfrは、UberAirbnbと同様の顧客体験を提供することを目指していますが、実際の作業を行う労働者をより重視したものにしようと結論しました。Hilfrが設定した最低賃金は、デンマークの最低賃金(団体協約)と一致しており、顧客の評価と清掃経験のレビューによって昇給も有りという設定です。
「私たちにとって、労働者に適切な労働条件と報酬を提供することは、とても大事なのです」とアンデルセンさん。 Hilfrでは、1時間当たり20クローネ(約348円)の追加給与を報酬に上乗せして支払う、福利厚生補給制度も導入しています。それは、まともな条件を提供して、労働者が税金を支払うようにさせるためです。


初期の課題と将来の目標

多くのスタートアップ企業同様、Hilfrも設立までにいくつかの重要な段階を経なければなりませんでした。会社のウェブサイトのベータ版を開始するまでに、このアイデアへの取り組みに1年ほどかかっています。
「問題はありましたが、ITに精通したスタッフに恵まれているので、技術的な不具合を修正し、ユーザのニーズに合わせてウェブサイトを簡単に調整することができるんです。」
立ち上げ間もない彼らのプラットフォームには、すでに約100人のクリーナーが登録しており、アンデルセンさんたちは自らのアイデアがうまくいっているのを楽しんでいるようです。


Hilfrに登録すべき理由

他の清掃会社と異なり、Hilfrは清掃アシスタントに完全な柔軟性を与え、労働者は自分の労働時間を自由に決めることができます。学生や退職者、あるいは余分なお金を稼ぐために仕事を探している人たちにも、これはたいへん便利です。効率的で管理しやすいプラットフォームであることも大きな利点です。登録する人は事前に、1時間当たり150クローナ(約2,608円)の最低賃金が保証されていることを知らされます。作業後には顧客が、清掃作業だけでなく、フレンドリーだったかなどの点からも評価します。
「適切な態度をとることで、ほとんどの労働者が優れた評価を得ています。それで自分の給与を増やして、より多くの仕事を得ることができると確信しています」とアンデルセンさんは話します。


Hilfrを選ぶ理由

人々がHilfrを選ぶ理由には3つあると彼は言います。まずプラットフォームが使いやすいこと。 第二に、いつでも顧客サービス指向のプロの清掃人を見つけるがことができること。そしておそらく最も重要なのは、Hilfrが公正さと透明性のルールにしたがって運営されていることに人々が気付いているからだというのです。それが正しければ、これは間違いなく価値ある選択だったと言えるでしょう。
市場には競合他社があるため、最初人々がHilfrを選ぶかどうかという懸念はありましたが、会社立ち上げ以来すでに多くの人々が関心を示しているため、アンデルセンさんたちは非常に楽観的です。


しかし彼らは現実的でもあります。「デンマーク人は悪いサービス、高価な掃除代、ヤミ経済に慣れてきました。人々の行動を変えるには時間がかかりますが、デンマークの消費者は私たちが提供する公正な価格や質の高いサービスを尊重できると確信しています。」
今のところ、事業収益は会社に投資することに決められています。「スタートアップを運営する方が、ショッピングに行くよりずっと楽しいので、私たちは後悔していません」とアンデルセンさんは付け加えました。


まとめ

このスタートアップの紹介記事の終わりには、「創設者たちは全員若く、資金も限られており、正しいアイデアと行動だけでスタートアップを成功裏に運営できると信じている」とつづられています。しかし収益だけでなく、社会をよい方向へ向けていこうというアイデアを実践に移す若者たちがいることは微笑ましく、将来に期待が持てる試みと言えるのではないでしょうか。


参考記事:
http://cphpost.dk/news/business/the-danish-startup-that-refuses-to-compete-on-poor-working-conditions.html


記事制作/シャヴィット・コハヴ (Shavit Kokhav)


ビジネスノマドジャーナル編集部
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