【AI時代をどう生きるか?】第12回(最終回):テクノロジーに近づき、同時に離れなくてはいけない

新しい働き方ブログ
2017年08月06日

太陽の光、毎日浴びていますか? 休日は家にこもり、パソコンやスマホばかり眺めて過ごしていませんか? もし該当するなら、あなたはこれからの時代に重要となる、身体感覚を失いつつあるかもしれません。「2020年人工知能時代 僕たちの幸せな働き方」の著者・藤野貴教さんによる、AI時代を幸せに暮らすためのヒントは、人間らしさを取り戻すことからスタートします。


西野亮廣さんから学ぶこれからの生き方

「西野亮廣さんの考え方や生き方は起業家そのもの。世の中が変化する中で、彼のような生き方こそがこれからの時代に必要だと感じました」


これは2017年7月4日、代官山蔦屋書店で行われた「2020年人工知能時代 僕たちの幸せな働き方」の発売記念トークイベントで、藤野さんが冒頭に発した言葉です。西野さんとは言わずと知れた、お笑いコンビ・キングコングのあの方です。実は西野さんは、これからの時代の働き方のモデルとして、藤野さんと著書の中で対談を行っているのです。


インターネット上で挑発的な発言を繰り返し、炎上騒動を何度も巻き起こしている西野さんですが、藤野さんは「彼は炎上させる天才ではなく、既成概念のおかしいところに気付く天才」と評します。例えば、西野さんは若くして「はねるのトビラ」という番組にレギュラー出演し、人気絶頂を迎えますが、やがてこう考えるようになります。


「なんで芸人は、毎日テレビに出ないといけないんだろう」


先輩から「芸人はそういうものだ」と諭された西野さんですが、やはり疑問をぬぐえず、テレビ出演を減らすように。そして、タモリさんの助言に従って絵本を描き始めます。しかし、そこでも出版業界の構造のおかしさに気付き、絵本の制作資金をクラウドファンディングで集めたり、無料公開したりと、革命的な行動を起こすようになったのです。


「何を言いたいかというと」と藤野さん。「僕らがいるのは時代の変わり目。これまで当たり前だったことが劇的に変化しようとしています。けれど、多くの方がその変化に気づいていても、仕方ないと諦めている。それを『つまらないじゃん』『こんなのロックじゃない』と言って、変えようとしているのが西野さんなんです」


人間にしかない身体性を大事にする

では、どうすれば西野さんのように違和感に気付き、「おかしくない?」と問いを立てられるようになるか。そのヒントとして、藤野さんは「身体性」を挙げます。AIと違って、人間には体があります。そして人間の感情は、身体性から生まれるのだと言います。


20代の頃、大手コンサルティング会社と、2つのベンチャー企業で働いていた藤野さん。通勤は地下鉄で、駅直結のビルに出社。日光を浴びない環境で夜まで働き、また地下鉄で帰っていく。するとやがて、仕事で成果を出しても、苦しさしか感じなくなっていったそうです。


何のために働いているのだろうと感じた藤野さんは、会社を辞めて愛知県に移住します。 そしてある日の早朝、海をぷかぷかと漂いながら、昇る日の出を見たときに、こんな感情が沸いてきたそうです。


「太陽が海に反射して、朝日を浴びたとき、『あったかい』って思いました。次に『生きてるなぁ』『ありがとう』と。僕は東京では、身体感覚を失っていました。その身体感覚が感情を引き起こすことを、良い方でも悪い方でも体験したんです。僕たちはテクノロジーに近づくことが必要ですが、同時に離れなくてはいけない。矛盾しているようですが、両方とも大事なんです」


幸せな働き方のためには、人工知能ではなく、まず人間ありきでないといけない。だからこそ、藤野さんはこういった、人間にしかない感覚を大事に考えているのだと話します。


「AIを知る、使う、作る」の3ステップが大事

身体感覚を大事にした上で、「AIを知る」「使う」「作る」の3つを行い、テクノロジー・リテラシーを高めることも必要だと藤野さんは強調します。


「AIを変に不安視するのもおかしいし、何でもできると過信するのもおかしい。僕らに今できるのは、AIの知識を付けて、実際に製品やサービスを使ってみること。すると、『ここまでできるなら、こういうこともできるのでは』と思いつくのです」


藤野さん自身も、AIを活用したサービスを開発しています。文系でプログラミングはできないという藤野さんですが、AIの勉強をし、実際に使ってきたからこそ、技術者と「こういった仕様で開発してほしい」と対等にやり取りできるのだそうです。


AIを知ることは結果的に、人間にしかできないことを知ることに繋がると藤野さん。「AIは与えられたデータをそのまま学習する。人間は素直に聞くことがある一方、『何で?』『それ意味があるの?』と言うこともある。それは人間に意思があるから」と説明します。論理思考と直感といった、相反する二つの思考を持ち合わせ、インテグレーション・シンキング(統合思考)ができるのは人間だけなのです。「こういう統合理解ができるのも、僕たちに身体感覚があるから。例えば創造性と生産性といった、真逆にあることを両方追及していくのも、21世紀のチャレンジです」と藤野さんは話します。


最後に藤野さんは、今の時代にテクノロジー・リテラシーを磨く意義について語ります。AIが進化しても、これから20年くらいなら、自分の仕事はまだ残るのではないか。AIの知識がなくても、自分が現役でいる間くらいなら逃げ切れるのでは。そう考えている方に対し、「僕には9歳、7歳、5歳の子供がいます。20年後、一番下の子が25歳になったときに、世界は変わっているでしょう。そのときに仕事の相談を受けても、世の中の潮流を知らないとアドバイスできません」と指摘します。


テクノロジーの進化によって、社会や産業、人の働き方や価値観がどう変わるか。正解は分からないけれど、情報収集して予測することはできる。だからぜひ、AIを知り、使い、作ってほしい――そう笑顔で呼びかけました。



藤野さんが代表を務める会社は「働きごこち研究所」といい、主に採用支援や研修、組織づくり、リーダー教育などを行っています。この日もAIの研究者や開発者ではなく、働き方のプロフェッショナルの視点から、「これからの時代をいかに生きるか」のヒントをたくさんくださいました。テクノロジーに近づき、同時に離れる。そんな振れ幅を意識しながら、本格的なAI時代の到来に備えることが、幸せな未来への近道なのかもしれません。


記事制作/肥沼 和之(株式会社月に吠える・代表取締役/ジャーナリスト)


【ライター】肥沼 和之
大学中退後、大手広告代理店へ入社。
その後、フリーライターとしての活動を経て、2014年に株式会社月に吠えるを設立。
編集プロダクションとして、主にビジネス系やノンフィクションの記事制作を行っている。
著書に「究極の愛について語るときに僕たちの語ること(青月社)」
フリーライターとして稼いでいく方法、教えます。(実務教育出版)」

ビジネスノマドジャーナル編集部
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