【外国人労働者の増加で職場・生活はどう変わる?】第18回:外国人の受け入れ=治安悪化ではない 対処すべきは不法滞在者

新しい働き方事例
2017年07月27日

わたしは本連載の数回に分けて、外国人労働者を受け入れるメリットとして挙げられている「異文化交流」や「国際化」が幻想である、と述べました。今回は視点を変えて、外国人労働者を受け入れる際の懸念事項である「治安の悪化」について考えていきましょう。


日本は先進国のなかでも、特に治安がいいと言われています。何をもって「治安がいい」とするかによって見方は変わるのですが、少なくとも日常生活で命の危険を感じる場面はまずありません。また、落し物が返却される、スリが少ないということからも、「治安がいい」と言えるでしょう。


そのため多くの識者やコメンテーターは、「外国人労働者を受け入れることによって日本の治安が悪化する」ことを懸念しています。その不安は、正当性のあるものなのでしょうか。


外国人は犯罪を犯すのか?

治安問題を考えるとき、「外国人は日本のルールや社会道徳を理解せず犯罪を行う可能性がある」といったニュアンスで語られます。ですがそれは、あまりに横暴というものです。


たしかに、ゴミ捨ての日を理解せずに燃えないゴミの日に可燃ゴミを捨ててしまう外国人の方はいるでしょう。エスカレーターで片側に寄らない外国人や、電車のなかで電話する外国人を見かけたことがありますが、それは単に「日本のルールを知らないだけ」であることが高いです。


それだけで、「外国人は日本のルールを守らないから治安を悪くするかもしれない」と言うのは、決め付けと言えるでしょう。


そもそも、外国人とはいえ一般的な社会通念は持ち合わせています。物は盗まない、人を傷つけない、手続きなしで滞在しない、などはどこの国でも同じです。わたしは「外国人」としてドイツに住んでいますが、だからといって物を盗んでいいとは思いません。


外国人だって一般的な「人間としてのタブー」は理解しています。それなのに、なぜ日本では「外国人は犯罪を犯すかもしれない」と思われているのでしょうか。


単純に「日本人ではないから」という差別的な考えも理由のひとつでしょうが、外国人=貧困というイメージがあることにも起因するでしょう。もし本当に「多くの外国人が経済的に困窮して犯罪を犯す」ような状況であるとすれば、それは日本の受け入れ制度に問題があると言えます。


「外国人だから犯罪を犯す」という理論は非論理的ですし、「外国人が犯罪に走る可能性が高い環境である」としたら、それは日本側に責任があるのです。


実際外国人は犯罪を犯しているのか?

社会データ図録』によると、2013年に検挙された来日外国人(いずれ帰国する予定の外国人)は5620人です。2004年に8898人でピークを迎え、そこから全体的に右肩下がりで減ってきています。


......こう言っても、正直それがどれほどのものか、ピンとこない方も多いでしょう。一重に犯罪と言っても、横領もスリも殺人も「犯罪」ですから、ざっくりとした数値だけの統計はあまり意味がありません。


では、「だれが犯罪を犯しているのか」に注目してみましょう。


移民グローバルレポート』によると、2013年の全体の犯罪率は0.2%ほどです。外国人の犯罪率は、全体よりごくごくわずかに高いだけであまり変わらない結果になっています。また、この統計では不法滞在者の犯罪率が0.5%ほどで、正規滞在している「外国人」の倍以上の犯罪率であることがわかっています。


もちろん、不法滞在者の犯罪のすべて精査することはほとんど不可能ですから、実際の犯罪率はこれ以上ということになるでしょう。つまり日本で犯罪を犯している外国人は、不法滞在している場合が多い、と言えるのです。


不法滞在である理由は、滞在延長が認められなかった、滞在許可が下りなかったなど、さまざまです。ですが一度不法滞在者になってしまうと、今度は日本出国すらむずかしくなります。その上、家を借りたり仕事をするのが困難になり、社会福祉も受けられないので、当然犯罪に走る可能性が高まります。


日本が注意すべきは外国人の不法滞在

正規滞在している外国人の多くは、仕事があり帰る家があります。そういった人は、犯罪に走ることは少ないでしょう。もちろんそれでも犯罪を犯す人はなかにはいますが、日本人でも仕事があり家族がいるのに犯罪に手を染めてしまう人はいるので、それは想定できる範囲内です。


つまり「治安を悪化させる可能性が高く懸念すべき」なのは、「外国人」ではなく、「不法滞在により経済的・社会的に困窮している外国人」なのです。


日本が考えるべきことは、「どうすれば外国人が犯罪を犯さなくなるか」という差別的なことではなく、「不法滞在者の取り締まり」という制度的なことなのです。


不法滞在者を摘発し、強制送還や刑務所での服役などを行えば、不法滞在者は減るのでしょうか? 外国人だって人間なのですから、不法滞在者だとしても「人道的な」対処が求められることになります。それが外国人を受け入れる国の義務ですから。


日本では、「外国人が治安を悪くする可能性」については話し合われますが、「不法滞在者の処遇」については無関心であるように思えます。


そもそもどうして不法滞在者が生まれるのか、どうすれば減らすことができるのかを考え対策しなければ、不法滞在者は減りません。不法滞在者が増えれば、日本の治安が悪化する可能性が高いのです。


日本に必要なのは、「外国人受け入れ=治安の悪化」と決め付け心配することではありません。治安を悪化させる可能性が高いのは不法滞在者であることを理解し、不法滞在者への対応を慎重に検討することなのです。


取材・記事制作/雨宮 紫苑


ビジネスノマドジャーナル編集部
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