【クラウドファンディングで誰もがビジネスをできる時代に】第21回:直接金融が主流だった日本社会

知見・スキル
2017年07月14日

これまで、クラウドファンディング、多くの人々から資金を集めるという手法は、日本社会の中で昔から行われてきたことを紹介してきました。そもそも、ビジネスに必要な資金は銀行から借りることで調達するのが常識のように扱われ始めたのは最近のことなのです。むしろ、クラウドファンディングのように多くの人々の力を借りてビジネスを興すという形態が一般的でした。


戦前までの日本社会は直接金融が主流

今でこそ銀行を通じた間接金融による資金調達が幅を利かせていますが、戦前までの日本は投資家から直接資金を集める直接金融が主流でした。


個人による株式投資も盛んで、明治中期から日本各地で株式取引所(現在の東証、地方証券取引所の前身)が設立された他、このような公的な取引所に加え、個人や証券会社が自発的に集まった場外市場での取引も行われていたほどです。会社の設立段階で広く株主を募集して大人数の株主に支えられる形で経営していくことも珍しくありませんでした。


第1回で紹介した流山鉄道の事例は極端ですが、多くの人々から資金を調達するというのは比較的ポピュラーな起業・経営手法だったということです。M&Aも盛んで、ある面でアメリカ以上の市場社会だったとも評価できます。これは都市部の株式会社に限られた話ではなく、地方の小規模企業・個人事業主レベルでも直接金融的な手法での資金調達が行われていました。


戦前の地方部では、銀行等の金融機関が発達途上だったこともありますが、コミュニティの力を活かした直接金融の存在感は馬鹿にできないものでした。明治維新前から無尽や頼母子講(たのもしこう)と呼ばれる独自の金融形態が存在していましたが、明治33年にスタートした産業組合制度によって更なる発展を遂げていったのです。


コミュニティファンドに支えられた日本の中小企業

産業組合とは、第7回で紹介した協同組織金融機関の原型と言えるものであり、地域の住民や中小企業の相互扶助組織として誕生しました。共同購買事業に加えて、信用事業と称した金融機能を持っていたことが特徴的です。


産業組合制度の狙いとして、帝国議会では「現在多クノ銀行ハ概ネ商業社会ニ金融ノ便ヲ与エルニ過キス、彼ノ農業、工業、漁業に従事スル細民ノ助ケニハナラス」と提案理由が説明されています。つまり、当時の銀行がターゲットにしていなかった一次産業や工場に勤める人々の助けになるための金融機関を作り上げるという思想のもとにスタートしたのです。


産業組合を源流とする協同組織金融機関の特徴は、資金の融通(金融)を受ける対象と資金提供者が同じ土俵に乗っている点にあります。現代風に言えば、地域の課題を解決するために、地域の人々によって作られたコミュニティファンドなのです。

産業組合の設立数は明治末期から昭和初期にかけて爆発的に増え、この過程で都市部の商工業に特化した市街地信用組合など、中小企業のための資金調達プラットフォームとしての性格を色濃く持った金融機関が各地で誕生していきました。ある面で、戦前の日本社会は多くの人々から資金を集めるプラットフォームが乱立するクラウドファンディング先進国だったのです。


クラウドファンディングは日本の伝統

現在のように間接金融が主体となったのは、第二次世界大戦下の統制経済と戦後復興に向けて採った計画経済路線が原因とも言われています。確実な経済成長を実現していくために、インフラ整備を担う大企業が効率良く資金調達できるようにするため、経営基盤強化を目的とした銀行の統廃合が進められ、都市銀行と1県1行の地方銀行という構図が生まれていったのです。


そして、起業を志したり、副業をいくつも持つような人よりも、ひとつの会社で長く働くことが尊ばれるようになり、現代の日本社会へとつながっていきます。しかし、このような日本社会のあり方は、せいぜい戦中戦後の100年にも満たない時間軸の中で構築されたものなのです。


むしろ、かつての日本社会・日本人は、ひとつの働き場所にこだわらず、多くの人々の支援を得てビジネスを興していくことが当たり前だったのです。戦後も民間金融に占める協同組織金融機関のシェア、自営業率が諸外国率に比べて高い水準で推移していました。
現在進められている働き方改革などは、けして目新しいものではなく、かつての日本社会のあり方を取り戻すための運動とも言えます。


情報通信技術の発達とともにクラウドファンディングという手法が再注目を浴びているのも、日本社会の伝統である直接金融への回帰を現しているのかもしれません。


記事制作/ミハルリサーチ 水野春市


ビジネスノマドジャーナル編集部
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