【AI時代をどう生きるか?】第9回:AIによる失業をベーシックインカムが救う!?

新しい働き方ブログ
2017年06月25日

「ベーシックインカム」という言葉を聞いたことがありますか? 社会保障の一種であるベーシックインカムは、近年ニュースで取り上げられることも多く、今後も世界的に注目が高まるであろう制度です。AIの普及によって生まれる、格差や失業者を救済するための手段の一つが、このベーシックインカムだと言われています。今回は、ベーシックインカム導入の背景や考え方などを詳しく解説していきます。


AIが生み出す失業者と格差

2016年、配車サービスを行う米国のウーバー・テクノロジー社が、自動運転サービスを開始することを表明しました。同社は2030年までに、既存の車をすべて、自動運転システム搭載車両に切り替えるそうです。このニュースを受けて、動揺したのはドライバーたちです。自分たちの雇用が奪われるのでは、と懸念が広がったのです。テクノロジーの影響を受けるのは自動車業界だけではありません。米政府は、時給20ドル以下の労働者の仕事はすべて、近いうちにAIに置き換わると予測しており、その数を3億5000万人とも算出しています。


本連載の第5回で、世の中にある702の職業のうち47%が、AIやロボットによって奪われる、という専門家の予測を紹介しました。まさにそれが現実になろうとしているのです。仕事を失った方の多くは、「労働移動」によって新たな職業に就けると考えられていますが、失業を免れることができない方も少なからずいるはずです。また、仕事に就くことができたとしても、安い賃金で働かざるを得ない方も出てくるでしょう。


AIやロボット、IoTなどのテクノロジー分野は、超・成長市場です。たくさんのビジネスチャンスがあるため、一山当てて巨万の富を築く企業も続々と誕生しています。すると、"成功した一握りの資本家と、使われる大多数の労働者"という図式が生まれます。AIの普及によって、世の中は便利で豊かになっていきますが、こういった格差社会を助長することも懸念されています。


世界中で導入が検討されるベーシックインカム

では、どのような対策を取ればいいのでしょうか。テスラ・モーターズCEOのイーロン・マスク氏など、多くの専門家たちが推奨しているのが、ベーシックインカムの導入です。ベーシックインカムとは、収入や職業や年齢に関わらず、全ての国民に一律の金額を給付する制度です。社会保障の一種であり、国が利益を還元する国民配当でもあります。


その歴史は古く、1970年代にはすでにカナダで導入実験を行っています。若年層の失業が問題となっているフィンランドでは、2017年1月から2年間という期限付きで、2000人の失業者に約7万円の支給を始めています。スイスでは2016年6月に、ベーシックインカム導入の是非を問う国民投票が行われました。成人には月27万円を、未成年者には月約6万8000円を支給するというものです。結局、賛成票は1/4にとどまり、否決されてしまいましたが、世界中から大きな注目を集めるきっかけになりました。


ベーシックインカムの特徴は、国民全員に同じ金額が支給されることです。裕福な方も貧しい方も、差はありません。失業者や貧しい方を救済するなら、生活保護の方が適切ではないか、という意見もあります。しかし生活保護は、受給資格のある方とそうでない方を判別するのに、膨大な労力とコストがかかります。また、不正受給をする人が必ず現れますし、支給されるべきなのに適用外となってしまう方もいます。ベーシックインカムであれば、すべての国民が対象のため、そういった問題を解決できます。また生活保護を受給すると、後ろめたさや屈辱を感じ、ストレスが伴ってしまうこともありますが、そんな心配もなくなるのです。


2つの課題をどう解決するか?

しかし、いいことづくめというわけではありません。ベーシックインカムの導入に際しては、主に2つの問題点が懸念されています。一つ目は、「国民が働く意欲を失うのでは」という点です。スイスの月27万円という例のように、もし生活に困らないくらいのお金が、何もしなくても毎月入ってくるのでしたら、あくせく働くのがバカらしいと思う人も出てくるでしょう。ではフィンランドの月7万円ではどうなるのか。同様に懸念する声もあれば、勤労意欲に大きな影響はないという楽観論もあります。こればかりは、ふたを開けてみないと分かりません。


二つ目は、「どのように財源を確保するのか」です。フィンランドの場合は、すべての国民にベーシックインカムを適用した場合、最大で200億ユーロ(約2兆4400億円)が必要となります。その金額を確保するには、所得税を約15%引き上げないといけません。では、日本の場合はどうでしょう。月7万円を全国民に支給しようとしたとき、100兆円近くかかります。するとフィンランド同様、約15%の所得税の引き上げが必要となります(分かりやすくするため、簡略化して算出しています)。では、一律に税率を上げるのか、高所得者に課税強化するのか、全ての国民が納得する案が求められるでしょう。


日本においては、まだベーシックインカムに対する待望論は強くありません。どのような制度なのか、あるいはその存在すら知らない方も少なくないでしょう。しかし、これから必ずやって来るAI時代において、その導入が議論されていくことは間違いありません。あなたや、あなたの家族や友人、仲のいい同僚、お世話になっている上司やお取引先など、すべての人が平等かつ豊かに暮らすために、今のうちからベーシックインカムについて知っておくことが、より良い制度の実現に繋がるのです。 


記事制作/肥沼 和之(株式会社月に吠える・代表取締役/ジャーナリスト)


【ライター】肥沼 和之
大学中退後、大手広告代理店へ入社。
その後、フリーライターとしての活動を経て、2014年に株式会社月に吠えるを設立。
編集プロダクションとして、主にビジネス系やノンフィクションの記事制作を行っている。
著書に「究極の愛について語るときに僕たちの語ること(青月社)」
フリーライターとして稼いでいく方法、教えます。(実務教育出版)」

ビジネスノマドジャーナル編集部
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