【フリーランスと働き方改革】第14回:34歳のフリーランスは、就活生と同じ悩みを抱えていた

新しい働き方ブログ
2017年06月20日

先日、とある大学生と就職活動についてじっくり話す機会があった。と言っても僕が何かキャリアカウンセリングのような活動をしているわけではなく、単純に「就活で悩んでいるので相談に乗ってほしい」と頼まれただけなのだが。


彼は現在4年生。6月になり経団連加盟企業が選考活動を本格的にスタートさせ、2018年卒の就活戦線が佳境に入ってきた中で、いくつかの中小企業の選考に落ちることを経験しながら、ようやく志望業界が固まりつつあるといった状況だった。


彼がその業界を志望する理由は「自分のため」。だから志望動機にツッコミが入ると、どれだけ想定質問に対するトークを用意していても自分の言葉にはならず、うまく切り返すことができない。就活の壁にぶつかる多くの学生が、同じような悩みを抱えているのではないかと思う。


就活生だけではない。それは社会人として立派に生きているはずの先輩たちだって同じなのかもしれない。


面接の入り口で一蹴されてしまう志望動機

一つだけ明確に断りを入れておくべきことがある。僕自身は大学を1年で中退してしまっているので、大学新卒の就職活動というものをまったく経験していない。エントリーシートもまともに書いたことがないし、大学などで行われるようなキャリア相談窓口を利用したこともない。もちろん、自分の志望業界に悩んだり書類選考や面接で落とされ続けて苦しんだりした経験もない。


そんな僕に何の相談をしたいの? と彼には事前に聞いてしまったのだが......。曲がりなりにも求人広告の仕事に10年以上携わり、新卒採用コンテンツにも関わってきた立場なので、「企業側がどんな人材を求めているか」ということは事例ベースで語れるかもしれない。日頃の取材活動ではさまざまな企業に出入りしているので、「◯◯業界の雰囲気」といったことも伝えられるかも。そう思ってじっくり話を聞いてみることにした。


「いろいろと悩んだんですが、今は不動産業界を志望しているんです」


そう彼は話す。不動産業界は、企業によってはハードな仕事を経験することになるかもしれない。覚えなければいけない専門知識も多い。そんな環境に身を置くことで、自分を圧倒的に成長させられると思うから......。


このパターンか、と僕は思った。「それはウチの会社じゃなくても実現できるよね?」「どうして競合の◯◯社じゃなくてウチなの?」「成長したいと考えるのは、社会人として当たり前なんだけど?」。相手が相手なら、面接の入り口で一蹴されてしまうパターンではないか。


「For社会」で語ると、人物の見え方は大きく変わる

彼は若者らしく(この表現を使う自分に少し辟易とするが)人懐こい笑顔で話すことができ、相手の目を見て率直に自分の考えを伝えられる学生だ。
表面的な面接対策ではなく、「なぜ不動産業界を志望するのか」ということをもっと深く、「自分のためだけではない」動機として語れるようになることが必要なのではないかと感じた。


採用広告には高い成長意欲を求めるコメントが並んでいるかもしれない。しかし企業は、応募者に単純にそれだけを語ってほしいわけではない。「この人は自社で高い成長意欲を維持できそうか」を探っているのだ。だから、その人なりのモチベーションリソースを求める。


「自分の成長のため」という視点を一旦忘れて、「社会のため」に何をしたいのか考えてみたら? 
そう投げかけてみると、リアルな体験談や彼自身の率直な思いがいくつも出てきた。物心ついた頃からずっと暮らしている街が、彼の知る十数年間で大きく開発が進んでいること。自分の街が進化していくことにワクワクしたこと。そうした都市開発に不動産業界が深く関わっていることを知り興味を持ったこと。自分の親がマイホームを手に入れたときのうれしそうな顔が印象に残っていること。そんな風に誰かの人生を明るくできる仕事は他になかなかないと思ったこと......。


そうした一つひとつのピースをつなぎ合わせていくと、彼がなぜ不動産業界で働きたいと本気で考えるようになったのか、その本当の理由が僕にも分かるような気がした。
「For自分」ではなく「For社会」の目線で志望動機を語れば、人物の見え方はこんなにも変わるものなのかと思った。


「ただ金を稼ぐためだけ」の仕事に陥ってしまわないか

そんな風に学生を相手に気持ちよく語り続ける中で、僕はふと考えてしまった。自分が今手掛けている仕事は、その仕事をやっている意味は、「For社会」で語れるのだろうか。


自分がやりたいことだけを突き詰め、無理な転職や無謀な独立を経て、僕は10代の頃から携わりたいと思っていたライターという仕事で食べている。そのことに何の疑いも持たず、むしろ誇りにさえ思っていたように思う。「好きなことを仕事にできるのは最もハッピーなことだ」と。


しかし、誰かに「なぜライターの仕事を続けているんですか?」と真正面から聞かれたとき、僕は何を語れるだろうか。「For自分」ではなく「For社会」の目線で、人に納得してもらえる動機を語れるのだろうか。正直に言って、どんなにスラスラとそれをプレゼンできたとしても、今の僕では欺瞞に満ちた動機になってしまうような気がする。そんな状態を続けていけば、好きなことを仕事にしていたはずがいつか、ただ金を稼ぐためだけの日々に陥ってしまうのかもしれない。


「今日はありがとうございました! 来週アドバイザーとの面談があるので、志望動機を本気で語れるように磨いてみます!」


別れ際、彼は明るくそう言ってくれた。アドバイザーとは新卒を対象にした人材紹介会社の担当者だそうだ。時代は進み、ビジネスモデルは変わる。企業は100万円を超える採用単価をかけて必死に新卒の学生1人を確保しようとしている。売り手市場だ。


結局のところ、就活中はまだまだ「For社会」の動機など突き詰めなくてもいいのかもしれない。
社会に出て随分経った気がするけど、悩みは同じだということに気づいたから。


記事制作/多田 慎介


【ライター】多田 慎介
フリーランス・ライター。1983年、石川県金沢市生まれ。大学中退後に求人広告代理店へアルバイトとして入社し、転職サイトなどを扱う法人営業職や営業マネジャー職に従事。編集プロダクション勤務を経て、2015年よりフリーランスとして活動。個人の働き方やキャリア形成、企業の採用コンテンツ、マーケティング手法などをテーマに取材・執筆を重ねている。

ビジネスノマドジャーナル編集部
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