【女性が活躍する社会は実現するのか】第8回:インタビュー/新しい土地に馴染むには、「仕事」をしてみるのもひとつの方法ー嫁ぎ先で自分の居場所を見つけたKさん

ストーリー
2017年06月15日

ほんの十数年前までは、結婚して嫁いだ後、女性は家庭に入り、家事や子育てを行うことが一般的でした。しかし現在は、嫁いだ旦那さんの転勤先の土地で、新たにキャリアを築く女性たちも増えているようです。岐阜県で図書館司書として働くKさん(30代)もその一人です。今回はKさんに、結婚後に働き始めたきっかけや、ふだんの生活についてお話を伺いました。


夫以外の人に、私は見えているの?

Q:図書館の司書として働くようになった経緯を教えていただけますか。

私は子どもの頃からずっと、大阪で暮らしていました。大学在学時に司書教諭の資格を取り、卒業後は学校の図書館に勤務。働きながら、司書の資格も取得しました。その後は市役所の教育委員会で働くなど、ずっと教育関係の仕事に携わっていたんです。ですが昨年(2016年)、夫との結婚を機に退職し、地元の大阪から岐阜へ引っ越しました。


現在は図書館で、司書として働いています。主に広報や、イベントの企画・運営を担当しています。あとは、子どもたちに司書のお仕事を体験してもらう「子ども司書」講座を開いたり、絵本作家や小説家を審査員に招いた創作コンテストを主催したりもしています。


Q:岐阜に来てから、すぐに働き始めたのでしょうか?

いいえ、結婚してからは、半年ほど主婦をしていました。大阪では実家に住んでいて、私は仕事をしていたので、実は家事は親に任せきりだったんです。結婚して二人暮らしになり、これを機に家事に慣れたいと思いました。


Q:そうなんですね。そこから、なぜ司書として働こうと思われたんですか?

最初は新しい土地で、家事をすることに新鮮みを感じていました。しかし、あるときふと、岐阜で私のことを知っている人も、私の名前を呼んでくれる人も、私の話を聞きたいと思ってくれる人も、夫しかいないことに気づいたんです。


「もしかしたら、私は夫以外の人には見えていないのではないか」と、自分を透明人間のように感じた時期がありました。家族からは「習い事とか、趣味の集まりに参加したら?」と言われましたが、行く気にはなれなかった。


「何かしなければ」と焦っていたときに、図書館で司書の求人を見つけました。そこにはよく通っていて、施設の中や雰囲気も素敵で気に入っていたので、「これだ!」と思い立って応募しました。無理やりにでも、外に行く用事を作らなければ私はダメになってしまうと感じていて。それが私にとっては「仕事」だったんです。


Q:司書の募集を見かけたのは、気持ちが乗るちょうど良いタイミングだったんですね。

主婦をしている間は、住んでいる家も、自分の家じゃないというか......夫の家に遊びに行っているような気分でした。自分の家なのに、「お邪魔します」と言いそうになることもあって(笑)。何をするにも、どこにいても落ち着かない状況だったんです。だから受かる、受からないに関係なく、申し込むことで一歩進めそうな気がしたんです。一名しか募集していませんでしたが、思い切って受けたところ人事の方が私の経歴に興味を持ってくださり、トントン拍子に採用していただくことになりました。


居場所を作るのは、長い時間がかかるもの

Q:Kさんは現在、どのような働き方をされているのでしょうか。

私は週に4日働く嘱託社員として、シフト制で働いています。主にイベントを担当しているので、土日に仕事が入るときが多いですね。旦那は実家の家業をしていて、日曜日と、たまに木曜日に休んでいます。お互いの休みが合うことは、(他の夫婦に比べて)少ないかもしれません。


Q:では旦那さまは、Kさんと一緒に過ごす時間が減ったということですよね。そのことに対して、何か仰っていますか?

特に何も言われていません。主婦をしていた頃の辛そうな私を近くで見ていたので、私が活き活きとしている今の状況に、彼も喜んでくれているようです。共働きの生活になってからは、家のことを分担して行うようになりました。一人暮らしが長かった彼は、家事全般がとても上手なので助かっています。


Q:職場の環境はいかがですか?

今の職場は、やりたいことを何でもさせてくれるんです。私は足に先天性の障がいを抱えているため車イス生活をしていますが、図書館ではバリアフリーが行き届いているので、ストレスは感じていません。


今度、子ども司書の子たちを連れて富山の図書館に遊びに行く予定です。私が行くことで、いろいろと手配することが増えると思います。しかし職場の方たちは「Kさんが担当だから」といって送り出して下さるので、皆さんの優しさに感謝しています。


Q:ありがとうございました。では最後に、今後はどのように暮らしていきたいか教えていただけますか。

以前、夫の母が、「地元の家族、友達、仕事から離れて見知らぬ土地に来たのだから、すぐに岐阜を好きになれなくて当然。大阪での32年間と同じくらいの年月が経った頃、岐阜が居場所になって、好きな人や場所がたくさんできていたらいい。だから今すぐ好きになろう、馴染もうと思わなくていいよ」と言ってくださったんです。


それを聞いたとき、とても気が楽になりました。以前は長い岐阜旅行をしている気分でしたが、働きはじめて、いつかは岐阜が自分の居場所になる予感を持つようになりました。ここに来てまだ1年。仕事以外のことをする余裕はまだありませんが、充実した毎日を過ごせています。義母が言ってくれたように、焦らずにゆっくり、岐阜を好きになろうと思います。


また、今後は色んなことにアンテナを張り、楽しそうと思ったことに挑戦していきたいですね。それが仕事でも、そうではなくても。そして子どもたちに、笑顔を与えられる人になりたいと思います。


おわりに

夫や親族以外の社会とつながる手段として、Kさんは仕事を選びました。働くことは、個人のキャリアを築くだけではなく、コミュニティに属するための手段にもなります。核家族化が進み、近所の人との付き合いも希薄になりつつある現代。馴染みのない地へ嫁ぐ女性は、自分の新たなコミュニティを、仕事を通して創ることができるのでしょう。


記事制作/平賀 妙子(株式会社月に吠える/ライター・編集)


【ライター】平賀 妙子
1989年、三重県生まれ。広告代理店勤務を経て、ライターへ転身。
企業のPRライティングやビジネス書の編集、IT企業のオウンドメディアの執筆などに携わっている。
普段は当たり前すぎて見逃されていることにスポットを当てて、
その魅力を伝える文章を書いていきたい。

ビジネスノマドジャーナル編集部
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