【外国人労働者の増加で職場・生活はどう変わる?】第12回:人材不足と低賃金で疲弊する介護の現場 技能実習生の受け入れは逆効果?

新しい働き方事例
2017年06月15日

技能実習生の受け入れは、労働力不足にあえいでいる分野、特に第一次産業の救いの手になるのではと、期待されています。ですが人材不足にあえいでいるのは、第一次産業だけではありません。高齢化や医療の発展による寿命の延長を受け、介護医療の分野でも、深刻な人手不足に悩まされています。


そういった現状を踏まえ、介護の分野でも、技能実習生の受け入れを開始するという方針が決まりました。とは言うものの、「外国人に介護を任せる」という抵抗感、日本の国家資格を取得するハードルの高さなどから、前途多難の様相を呈しています。


 

前々回で技能実習制度の優れた点を、前回で問題点について述べましたが、今回は新しく受け入れが決まった介護の技能実習について考えていきましょう。


 

介護でも技能実習生の受け入れを開始

入管法の改正により、技能実習制度の対象職種に、介護が加えられることとなりました。厚生労働省より、「技能実習制度の対象職種への介護職種の追加を行うこと」が正式に発表されています。


技能実習制度への介護職種追加に関するQ&A』では、「人材育成を通じた開発途上地域等への技能等の移転による国際協力の推進を図ることを目的」とし、「介護人材の不足への対応を目的とするものではありません」と明記されています。また、「日本の介護技術を他国に移転することは、 国際的に意義のあるもの」としています。


つまり、「人手が足りないから外国人に介護を押しつけるのではなく、あくまで国際協力である」という姿勢で受け入れるようです。ですがこれは、誰に目にも明らかな詭弁と言わざるをえません。


人手不足と長時間労働、低賃金など、「介護業界の闇」は何度も取りざたされています。介護士の地位や待遇の向上の必要性は、何度も指摘されています。それなのに、「日本の介護技術」などアテになるのでしょうか。むしろ日本は、社会福祉が進んでいる北欧などから介護技術を学ぶ立場であるはずです。


また、人手不足を解消する目的ではないと明示していますが、ただの「技術を教える」制度であるならば、現場にとって負担でしかないはずです。ただでさえ人が足りず、長時間労働が問題になっているのですから。


つたない日本語で優しい言葉をかける外国人介護実習生と、それをほほえましく見守り受け入れる日本の高齢者―そうなれば理想的なのですが、果たしてそううまくコトが進むのでしょうか。


介護の現場はなにを思う?

介護のお仕事』という人材紹介サービスを展開している株式会社ウェルクスが、外国人介護士についてのアンケート調査結果を発表しています。


「自分の職場に外国人介護士が入職するのは?」の問いに対し、賛成が56.8%、反対が43.2%と、賛成派がやや多い結果となりました。また、「介護士に国籍は関係ない」が60.5%と過半数を超えています。現場で介護に従事する人は、決して大多数が反対というわけではないようです。


ですが、「外国人介護士の受け入れで、人材不足は解消すると思う?」という質問に対しては、思わないが82.7%と厳しい結果になっています。そして、「自分が海外で外国人相手に介護をするとしたら、やっていけない」と答えた人が58%もいることに注目しなくてはいけません。


介護の現場にいる方は、外国から介護士を受け入れたからといって、日本の介護業界が飛躍的に成長していくほど甘くはないと思っているのでしょう。また、「外国人の介護はできない」と思っている人が多いことからも、国境を越えた介護のむずかしさがわかります。


一方、日本介護福祉会は、「国民の介護を守るための活動」と称し、技能実習制度に介護分野を加えることに明確に反対しています。


理由は、以下の通りです。


日本での介護人材確保対策が十分行われていない状況で、労働力確保のため単純労働として、 日本語にいるコミュニケーション能力や一定の介護技術がないまま外国人が介護分野に参入することは、 介護サービスの質の低下を招き、国民が安心して介護を受けることも出来なくなる懸念があります。 また、安い労働力参入は現在の介護職員の賃金の低下を招き、更に日本人による人材不足は深刻化する恐れがあります。
出典:http://www.jaccw.or.jp/home/info.php


外国人介護士の受け入れに賛成で「国籍は関係がない」という考えと、受け入れに反対で介護サービスの質と日本人介護士の地位を守りたいという考え。どちらも非常に理解のできる意見です。


外国人介護士は日本の介護を変えるのか

あなたの祖父母に介護が必要になったとして、担当する介護士が外国人だったら、どう思うでしょう。


おそらくですが、「まったく気にしない」と即答できる方は、少ないのではないでしょうか。


介護では繊細な作業が多く、同僚や高齢者とのコミュニケーションが必要不可欠です。そのため、「外国人」に警戒してしまう気持ちはわかります。


「大事な仕事だから外国人には任せられない」という考えは、多くの日本人が抱いている外国人への不信感のあらわれと言えるでしょう。それは人種差別という積極的な悪意ではなく、関わったことのない外国人への恐れといった方が適切かもしれません。


介護という、デリケートで難しい仕事だからこそ、そこで外国人介護士で受け入れられることがあれば、日本人の多くが抱いている外国人への「特別視」をなくすきっかけになるかもしれません。


人手不足を安易に外国人に頼るのではなく、高齢者やその親族が信頼できる介護士とはどんな人なのか、現場の労働環境を改善するためにはなにが必要なのか、しっかりと考えなくてはいけません。


高齢化社会で、介護はこれからもっと需要が増える分野です。急場をしのぐための、帰国を前提とした技能実習生の受け入れだけでなく、外国人介護士の受け入れについて、真剣に議論する必要があります。


取材・記事制作/雨宮 紫苑


ビジネスノマドジャーナル編集部
専門家と1時間相談できるサービスX-bookを介して、企業の課題を手軽に解決します。業界リサーチから経営相談、新規事業のブレストまで幅広い形の事例を情報発信していきます。
▼ この記事を気に入ったらシェアをお願い致します。 ▼

オススメ記事