【外国人労働者の増加で職場・生活はどう変わる?】第10回:技能実習制度「役に立った」が95.4% 国際協力と技術獲得―双方の利害が一致

新しい働き方事例
2017年06月01日

9回目の連載である前回では、技能実習生の制度の概要について書きました。今回はもう少し掘り下げて、「受け入れ国日本と、人材輩出国の利害の一致」について考えていきましょう。


まず、みなさんは、技能実習制度についてどんな考えを持っていますか? 「いい」「悪い」といったざっくりした印象から、具体的に「こういう点が問題だと思う」など、さまざまな意見があるでしょう。


次回で詳しく取り上げる「雇用主による実習生の搾取」や「実習生の犯罪」などの問題が何度も取りざたされているので、ネガティブなイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれません。


ですが、それはあくまで技能実習制度の一面にしかすぎません。本来技能実習制度というのは、互いの利害が一致する理想的な制度なのです。


労働力不足解消の力強い味方?

前回紹介した「技能実習生が従事している職種」では、機械・金属関係や繊維関係、建設関係など、若い労働力を確保するのが難しいとされている職種が多くなっています。


技能実習制度は「技術を教える国際協力」という名目で成り立っていて、「実習生は労働力ではない」としています。ですが現実的に、実習生は日本にとって大切な労働力になっています。定住の心配がない人材なので、受け入れの理解をしてもらいやすいという思惑もあるかもしれません。


それを裏付ける、実習生が「労働力」として期待されている現実が、2016年12月17日に放送されたNHKの『おはよう日本』で紹介されました。


舞台は、人手不足に悩んでいる、とある大阪の建設会社。「8人の求人に対して1人しか応募がない」という統計があるほど、建築業は人手不足に悩まされています。


その建築会社は、そういった現実を踏まえ、7年前から外国人実習生を受けいれています。実習生は日本語と日本の技術をしっかりと勉強し、欠かせない人材として現場で活躍しています。


社内の人間関係も良好なようで、社長は「法律が許されるのであれば、本当に、ずっといてほしいです」と語っています。


外国人を労働者として受け入れることに対して、否定的な考えの人も少なくないでしょう。ですが、「日本人だけの雇用にこだわっていたら仕事をこなせなくなる」という状況に立たされたら、どうでしょうか。その場合、外国人労働者は「希望の光」にもなりえます。


事実、この建築会社は、実習生の受け入れという国際協力に参加しながら、労働力を確保しているのです。


日本で学び、祖国で働く

技能実習生は原則として、実習期間が終わったら、帰国することになっています。というのも、技能実習制度は、「日本で学んだ技術を祖国で生かす」という理念のもと運用されている制度だからです。ですが実際、実習生たちは日本で満足いく技術を習得しているのでしょうか。


JITCOによる『2015年度 帰国予定(6ヶ月以内)技能実習生による 技能実習評価調査結果報告』を見てみると、技能実習生が実習におおむね満足しているという結果が出ています。


目標達成度に関しては、「当初の予定以上に達成できた」が38.7%、「十分に達成できた」が56.2%、「達成することができなかった」が5%となっています。また、技能実習の有効性に関しては、「とても役立った」が43.1%、「役立った」が52.3%、「あまり役立たなかった」が2.9%、「全く役立たなかった」が0.7%となっています。


94.9%の回答者が目標を達成しており、95.4%が「実習が役立った」と答えているのです。


回答者が、技能実習生のなかでも優秀だった、もしくは積極的だったという可能性もあります。ですが、少なくとも一定数の技能実習生が実習に満足している、という結果は見逃せません。


また、実習生の今後について、「実習内容と同じ仕事をする予定がある」が35%、「予定はないが実習内容と同じ仕事をしたい」が14.3%、「実習内容と関連する仕事をする予定がある」が10.1%となっています。つまり、約6割の実習生が、習得した技術を将来に活かしたいと考えているのです。


専門的な技術の習得には時間がかかる上、経済的に難しい場合もあります。国の公的制度を利用して技術を学べるというのは、実習生にとっても大きなメリットとなります。


本来は美しい国際協力

人手不足にあえいでいる雇用先と、技術を習得したい実習生。雇用主は労働力を確保でき、実習生は技術を習得できる。もともとの計画通り、双方が国の期待通りに制度を利用すれば、そのような理想的な利害一致の状況になります。


それは国が言うところの「国際協力」であり、日本の技術力を世界にアピールするひとつのきっかけにもなります。特に、アジア各国に存在感を示すチャンスにもなりえます。


そう考えると、技能実習制度は、双方に利益をもたらす制度と言えるでしょう。ですがそれは、「正しく」運用されたときの話です。悪用されれば、どんな制度も「犯罪の温床」にもなってしまいます。特に、国境をまたいでいるため、犯罪が発覚しづらいという現実もあります。


技能実習を「美しい国際協力」にしておくために、制度を悪用した犯罪は適切に罰していかなくてはなりません。次回では、制度の悪用について考えていきましょう。


取材・記事制作/雨宮 紫苑


ビジネスノマドジャーナル編集部
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