【CTOインタビュー】ビジネスプロセスを理解し、「サービスを創るエンジニア」になってほしい−エアークローゼット・辻亮佑さん

経営者インタビュー
2017年05月24日

月額制のファッションレンタル」という新たな価値を創造し、2014年の立ち上げ以来、順調に拡大を続けているエアークローゼット。マーケティングや仕入れ、物流などのさまざまな部門がエンジニアと協働してサービスを展開しています。


CTOの辻亮佑さんは「ユーザーとの距離がとても近く、成長の機会が豊富にある」と語ります。エアークローゼットのエンジニアはどのように働き、どんなことを期待されているのでしょうか。


「倉庫と顧客をつなぐ」ためのシステム開発にも携わる

Q:エアークローゼットのサービスが拡大を続けていますが、現在はどのような体制で運営しているのでしょうか?

辻亮佑さん(以下、辻):

現在の正社員数は40名で、インターンと業務委託のスタイリストを含めれば100名体制になります。このうちエンジニアは十数名。当社にはマーケティングやバイイング、倉庫管理などさまざまな職種があるのですが、エンジニア比率が30パーセント前後で推移しています。


Q:エンジニアがエアークローゼットを志望する動機は何ですか?

辻:

当社を志望する方は、「新しい技術を身につけたい」「to Cの仕事がしたい」「リアルビジネスに携わってみたい」と考えて応募してくださるようです。現メンバーはSIer出身が多く、サービスの特性から、女性のエンジニアも活躍しています。


採用段階では、「事業に興味を強く持ってくれているか」を特に見ています。その上で今後どんなスキルを身につけたいか、何を目標にしているかを聞いていますね。


Q:エンジニアのキャリアパスを考える上で、大切にしていることはありますか?

辻:

制度面ではまだ整備途上ではありますが、基本的なマネジメントの考え方としては、「自身のキャリア像の中で何を身につけてもらうか」を大切にして会話しています。入社前はフロントの経験しかない人でもバックグラウンドに関わっていけますし、エアークローゼットに入社してからインフラに興味を持ち始める人もいるんです。


もともと世の中になかったサービスなので、新たな開発にもどんどん挑戦していく必要がありますし、それができる面白さがあります。倉庫とお客さまをつなぐために、ロジスティクス分野のシステム開発に絡んでいくこともある。幅広く関わっていけるからこそ、キャリアビジョンを明確にしていかなければいけないと思うんです。


Q:技術領域の幅広さはもちろん、ビジネス領域でもさまざまな経験が積めるのですね。

辻:

特にエアークローゼットの場合は、「ユーザーとの距離がものすごく近い」ことで学べることが多いんですよ。月額制のサービスなので継続して使っていただいているお客さまが多く、スタイリストへのフィードバックもたくさん寄せられます。そうした声に日常的に触れて、自分が関わったサービスの評価をダイレクトに感じることができます。成長機会には恵まれていると思います。


技術をベースに事業開発のための提言ができるのは、エンジニアだけ

Q:評価やフィードバックも辻さんが担当されているのですか?

辻:

そうですね。ただ、エンジニアだからといって特別な評価軸を定めているわけではありません。他の職種と同じように目標を立てて、そこに向けた行動計画を決めていくイメージです。3カ月後や1年後といったタームはもちろん、3年後、5年後、10年後の目標も、ざっくりですが立てています。


Q:「10年後」ですか?

辻:

はい。例えば「10年後には海外で働いていたい」という目標を持つのであれば、5年後には特定の技術領域で絶対的な自信を持っている状態になっておくべき。そのために1年後にはインフラ分野を得意とするエンジニアになろう。まずはこの3カ月でログ収集の精度を高めよう......といった具合に、長期的な目標から逆算して目の前の取り組みを決めていきます。


こうした目標をメンバーに自己申告してもらい、四半期ごとに1on1で面談し、すりあわせを行っています。


Q:自社のエンジニアには今後、どのような成長を望んでいるのでしょう?

辻:

技術的に期待したいことは多岐にわたりますが......。そもそもエンジニアなら「技術を磨く」のは当然のことで、それだけで満足して成長を止めてはダメだと思うんです。その技術を使って、もっといいものを作る、もっといい事業にする。そんな提案をどんどん発信してほしいですね。


技術はどんどん複雑化していきます。それをとらえて事業開発のために提言できるのはエンジニアだけですから。エンジニア発の事業変革や新規事業もやりたいと思っています。


Q: メンバーの皆さんによくかける言葉はありますか?

辻:

メンバーにはよく「なぜそれをやるんだっけ?」と語りかけています。「なぜ?」を繰り返していくことで、自分が担当している仕事の本質を考えるようになります。


「自社のビジネスプロセスをちゃんと語れるようにしよう」ということもよく言っています。エアークローゼットの場合は1企業・1サービスなので、特に自社のビジネスプロセスを理解しておくことが重要だと思っています。事業の流れ全体に興味を持って、いろいろなことに口を出せる人材になってもらえたらうれしいです。


現在のメンバーは自社の事業に没頭してくれていて、とてもありがたい状況なんですが、今後は外部の刺激に触れ、外に出てエンジニアとして発信するような機会も増やしていきたいですね。



他部署にもどんどんツッコミを入れるCTO

Q:辻さんご自身のキャリアについても、ぜひ教えていただきたいです。

辻:

私は大学時代まで、エンジニアとは無縁の道を進んでいたんですよ。法学部に通い、法曹を目指してロースクールにも行っていました。「世の中の機会の平等を実現したい」「どこに生まれてもチャンスがある世界を作りたい」と思っていたんです。ただ、あるときに裁判官の話を聞く機会があったんですが、そこで法曹への興味を失ってしまいまして(笑)。


卒業後は縁あって従業員50人規模のSIerに就職し、そこでエンジニアとなりました。プログラミングは全然知りませんでしたが、仕事をしながら楽しく学べましたね。


そのうちにHTML5が流行りだし、より深く学んでみたいと思って楽天へ移りました。リードエンジニアとしてメンバーを持ち、マネジメントしながら開発するという良い経験をさせてもらいました。将来は海外で働きたいという思いもあったので、楽天は私にとって最適な環境だったんです。


Q:エアークローゼット代表の天沼聰さんも楽天の出身ですよね。

辻:

はい。楽天で顔見知りになって、天沼が退職する際に初めて一緒に飲みにいったんです。そこでエアークローゼットという事業のビジョンや思いを聞いて意気投合しました。最初はティザーサイトなどをボランティアで作っていたんですが、しばらくして「正式に一緒にやってもらえないか」と声をかけてもらって。それでCTOとしてジョインしました。


Q:現在のCTOというポジションの役割を果たす上で、辻さんはどんなことを心がけていますか?

辻:

CTOとは、経営陣の中で最もシステムに精通した人。エンジニアリングに責任を持って、5人しかいない組織なら自分が作るし、100人、200人といる組織なら組織力で作る。目の前のタスクは変わっても、その本質は変わりません。


あとは、「エンジニアリングの考え方で自社の課題を発見する」ことが大切なのだと思います。エアークローゼットでは週に一度の全体会議で各部門のKPIを報告するんですが、私は他部署の結果にもどんどんツッコミを入れています。これはCTOという立場に限った話ではありませんが、エンジニアだからこそ見えてくる課題があるんですよね。そこをちゃんと指摘して、解決策を提案していくのも重要な役割です。


Q:今後、個人としてはどのように活動していきたいと考えていますか?

辻:

ゆくゆくは、学生時代から考え続けている「機会の平等」を実現するための事業に挑戦してみたいですね。アメリカの大学などでは、ウェブサービスを使って教授が無料で授業を発信し、レポートのやり取りなどもできるようになっています。これによってある程度の機会の平等が実現されていると思いますが、本当に貧しい国や地域に住んでいる人は、そもそもそんな情報を得ることすらできないのが現状です。


少なくとも、誰もがスマホ1台は持てる世界を実現したい。ウェブとエンジニアリングの力で世界中に学ぶチャンスを広げるために、これまでの経験を生かしたいと考えています。



取材・記事作成:多田 慎介


辻亮佑さん プロフィール
株式会社エアークローゼット 取締役CTO。大学卒業後、エンタープライズ向けの開発会社に入社。インフラやDB、バックエンド、フロントエンドなど多岐にわたる開発に従事し、エンジニアリングの面白さにのめり組む。2012年に楽天株式会社に入社し、フロントエンドに特化して新規立ち上げビジネスの設計や開発、チームマネジメントを担当。2015年、株式会社ノイエジーク(現:エアークローゼット)にジョイン。

ビジネスノマドジャーナル編集部
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