【フリーランスと働き方改革】第10回:「プレ地方暮らし」をしながら考える、可動性の高い生き方

新しい働き方ブログ
2017年05月23日

いつかは結婚して家族とともに家を持つ。子どもの頃は何となく、そんな「大人像」をイメージしていたものだった。大人になれば住む場所は固定化されるものなのだという気もしていた(両親がいわゆる大企業勤めの「転勤族」ではなかったことも影響しているのだと思う)。


しかし現実とは面白いもので、34歳になり、子を持つ身となった今でも僕は賃貸暮らしで、家を所有する予定も当面ない。フリーランスという生き方の将来性に自分自身がまだ確信を持ちきれていないことが大きな理由だが、もう一つ、「可動性の高い生き方をしたい」と考えていることも背景にある。


この連載でも何度か「可動性の高い生き方」という表現をしてきた。これはフリーランスのみならず、あらゆる働き方を通じて重要視していかなければいけない観点だと思っている。


首都圏育ちの人をうらやましく感じる理由

僕は10代の終わりに上京した。東京で働き15年あまりが過ぎる中で、多くの「首都圏出身者」と知り合った。彼らと話していて率直に「うらやましいな」と思うことがある。それは、この首都圏が地元であり、多くの人がここで生きていくことに何の疑いも持たずに済むからだ。


「地元」というのは、大きな生活インフラだと思う。実家があり、幼少期からの思い出と土地勘があり、その土地の生活者ならではの知見もある。僕は東京で子育てをしているが、子どもの教育環境として適した街はどこなのか、学校は公立が良いのか私立が良いのかといった情報を集めながら、手探りで将来を考えていかざるを得ない。


地方ではよくあるケースだと思うが、僕が生まれ育った土地では公立一択で、何ら迷うことはなかった。「選べる対象が多いからこそ悩む」というのは、学校に限らずあらゆるモノやサービスがあふれ返る首都圏のデメリットであるようにも感じている。


とはいえ、端的に言えば首都圏は地方に比べて仕事の宝庫であることに変わりはない。特にフリーランスにとってはそうだろう。取引できる企業の数は地方に比べて圧倒的に多く、生活コストの差を考えても、仕事面ではやはり首都圏が優位な状況にあると思う。だからこそ、生まれ育った地元が首都圏にあり、豊富な情報と経験をうまく使いこなしながら「ここでずっと生きていくよ」と言える人がうらやましいのだ。


前提は、自分の働き方や生き方が変わっていくこと

僕は北陸の出身で、妻は近畿の出身。連休の時期にどちらかの地元に帰り、祖父母と子どもが弾けるように楽しい時間をともに過ごしているのを見るうち、「いつかは帰りたいよね」という共通認識が生まれてきた。


そうして現実的な検討をするたびに「今は東京で仕事をしているから帰れない」という結論になるのだが、これは判断を先送りにする言い訳でしかないのかもしれない。親はどんどん年老いていくし、子どもはどんどん自我が芽生えていく。彼自身にとっての「地元」意識もまもなく形成され始めるのだ。今のところは「就学までには決めよう」ということにしているのだが......。


冒頭で書いた「今は家を持たない」という考えも、結局はその迷いの表れだ。家を買うことが終の住み処を決めることとほぼ同義であるとすれば、これほど可動性を低くする選択もないように思う。


振り返れば20代前半の頃までは「俺は一生、東京で生きていくんだ!」と考えていた。当時は会社員としてキャリアを積んでいくことに何の疑いも持っていなかった。ある意味では「現状からできる限り変化しないこと」を望んでいたのかもしれない。


フリーランスとして生きている今は違う。変化し続けなければキャリアを切り拓けず、明日にでも腐ってしまう世界だ。自分の働き方や生き方が変わっていくことを前提にしているから、少なくとも今は将来の可動性を低くする選択肢は避けるしかない。


格安ランニングコストで「プレ地方暮らし」

そんなこんなで今は多摩地域の、とある街に落ち着いている。


都心の取材先までは電車で1時間以内。家賃は23区内に比べれば格段に安く、比較的築年数の浅い3LDK物件が10万円以内でたくさんある(ちなみに今住んでいるところは、独身時代に住んでいた23区内の1K物件より安いのだ......)。駐車場は月1万円で、車を持ってもランニングコストは大した負担にはならない。待機児童問題がないわけではないが、23区内に比べればかなり落ち着いている。


完全とは言えないけれど、東京で仕事をしながら生きていくには申し分ない街だ。だからこそかつては、ベッドタウンとして急速に発展したのだろう。しかし僕にとっては終の住み処ではない。今はここを、いつか地元に帰るまでの「プレ地方暮らし」の舞台にするつもりでいる。


僕自身が働き方改革を進め、リモートでもしっかりとクライアントに価値提供できる存在になることで、東京との距離を一気に広げていく。大きく生活を変化させることが前提だから、可動性をできる限り確保しておくことが必要になる。フリーランスで生きていくことは、そのために最も欠かせない要素なのだ。


記事制作/多田 慎介


【ライター】多田 慎介
フリーランス・ライター。1983年、石川県金沢市生まれ。大学中退後に求人広告代理店へアルバイトとして入社し、転職サイトなどを扱う法人営業職や営業マネジャー職に従事。編集プロダクション勤務を経て、2015年よりフリーランスとして活動。個人の働き方やキャリア形成、企業の採用コンテンツ、マーケティング手法などをテーマに取材・執筆を重ねている。

ビジネスノマドジャーナル編集部
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