【女性が活躍する社会は実現するのか】第6回:2018年からの配偶者控除制度の変更にあたって、働き方の変化、妻の思いは?

ストーリー
2017年05月18日

女性の活躍を推進する政策の一貫として2017年の税制改正で「配偶者控除制度」の改正・見直しが行われ、2018年1月より適用されることになりました。配偶者控除とは、夫もしくは妻が働いて一定収入を得ている場合、世帯主の所得から税金が控除される制度のこと。制度が適用されると、各家庭が支払うべき所得税や住民税の負担額を減らすことができます。今回の改正は、家庭にどれほどの影響を及ぼすのでしょうか。改正の概要と子育てをしながら働く配偶者の声を合わせて紹介していきます。


配偶者の状況によって控除額が変わる

配偶者控除制度は昭和36(1961)年に発足しました。現在では、配偶者の年収が「103万円以下」の場合に、控除が適用されています。また、その他にも「納税者の配偶者で、同じ生活財源を使用している人」「青色事業専従者ではない人」であることも、控除を受ける際の必須条件となっています。


さらに、配偶者の年収が103万円以上になると、年収額が増加するに従って控除額が減額される「配偶者特別控除制度」も設けられています。つまり、配偶者の年収が141万円未満である家庭は控除対象になるというわけです。


また、一般的な控除額の限度は38万円ですが、高齢であったり、心身に障がいを持つ配偶者がいる場合は、追加の控除があります。配偶者が70歳以上の場合は48万円まで、同居特別障害者(※)がいる場合には75万円までの控除を受けることができます。
※特別障害者である控除対象配偶者や扶養親族で、自己や配偶者、生計を一にする親族のいずれかとの同居を常としている方


考慮すべきは税金にとどまらない

今回の改正では、この配偶者控除制度の年収上限額が「150万円以下」に引き上げられます。なお、2018年の1月から発生する年収が判断対象となります。(図1参照)


表:妻[夫婦のうち年収が低い方]の年収表
(大和総研「配偶者特別控除の拡大では就労促進効果は乏しい」を元に作図)


またこの改正では、稼ぎ手の年収制限が設けられることになりました。年収が1120万円以下、かつ配偶者の年収が150万円以下の場合は、満額の38万円が控除されます。しかし、どちらかが上限である1120万円以上の収入を得た場合、控除額は徐々に減額され、配偶者の年収が201万円を超える、または稼ぎ手の年収が1220万円を超えた時点で控除額は0円になります。そのため高収入の家庭は、今までよりも税金を多く支払う可能性が出てきます。(図2参照)


表:夫[夫婦のうち年収が高い方]の年収表
(大和総研「配偶者特別控除の拡大では就労促進効果は乏しい」を元に作図)


さらに、2016年10月からスタートした社会保険の適用拡大に伴い、配偶者の年収が150万円以下でも、社会保険料を支払う義務が生じる可能性も出てきました。


これまでは、配偶者の年収が103万円を超えても、「130万円以下」であれば、稼ぎ手の扶養範囲内でした。そのため、国民年金や健康保険料といった社会保険料を支払う必要はなかったのです。しかし今回の変更で、年収が106万円を超え、かつ、以下の要件を全て満たす場合は稼ぎ手の扶養から外れ、社会保険に加入しなければいけなくなったのです。


出展:厚生労働省「平成28年10月から厚生年金保険・健康保険の加入対象が広がっています!(社会保険の適用拡大)


たとえば配偶者の年収が130万円の場合、控除額は満額を受け取れますが、必ず社会保険料を支払わなければいけません。このため、控除制度の年収上限が150万円に引き上げられたとしても、扶養から外れることを避けて「年収を106万円以下に抑える(106万円÷12カ月=月収8万8333円になるので社会保険料を払わなくていい)」という選択肢を選ぶ人が増加する可能性があります。


「夫婦控除を希望」「時代遅れだ」...制度改正に対する意見

次に、配偶者控除制度の変更に対し、どのような意見があるのか見ていきましょう。


■夫婦控除でなければ意味がない

政府は配偶者控除を廃止し、代わりに「夫婦控除」を導入することを検討していました。これは、夫婦のどちらかの所得の額が38万円以下であるかどうかに関係なく、夫婦両方の所得の合計額が一定額以下ならば夫婦の所得額から控除をしようという制度です。共働き夫婦のすべてが対象となるため、女性もフルタイムで働いている世帯にとっては大きなメリットになるはずでした。しかし今回は、夫の所得が高く専業主婦がいる世帯では税の負担が増えることや、制度変更によって生じる混乱を避けるためという理由で、見送りになってしまいました。


このことについて、子どもを育てながらWebライティングで収入を得ているある女性(30代)は、夫婦控除があったら良かった、と漏らします。彼女の収入は時給換算ではなく、一記事〇〇円~という契約です。たくさん納品すればその分だけ稼げるため、年収が300万円以上になることも。当然、配偶者控除制度だと扶養の対象外になり、以前よりも税金を多く支払わなければいけない可能性が高くなってしまうのです。


■上限引き上げは歓迎だけど...

パートタイマーとして働くある女性(30代)は、年収の上限が150万円に引き上げられることを歓迎しているといいます。これまでは年収が103万円を超えないよう、年末に仕事を休んで調整していました。制度変更により「限度額を気にして働く必要がなくなった」という点が彼女にとってのメリットになります。


また、上限が引き上がることは歓迎でも、前述したように社会保険料の支払いが発生する年収130万円以上を稼ぎたくないという声もあります。回避するためには勤務日数や時間を調整する必要がありますが、こちらの希望だけを聞いてくれる都合の良い職場はないだろうと、パートタイマーで働く女性(40代)は感じているようです。


■現代に合わない制度なのでは?

そもそも配偶者控除制度そのものが、今の社会状況に合っていないのではないか、という意見もあります。制度が導入された昭和36(1961)年当時は夫が外で働き、妻が家で家事をする家族形態が圧倒的に多く、昭和55(1980)年時点でも共働き世帯が614万世帯、妻が専業主婦の世帯が1114万世帯と、専業主婦世帯が圧倒的に上回っています。(厚生労働省「専業主婦世帯と共働き世帯の推移」 )共働き夫婦は少数派だったため、多くの人にとって納得のいく制度であったと考えられます。


しかし2014年には、共働き世帯は1114万、妻が専業主婦の世帯は687万と逆転。この状況を見れば、配偶者制度そのものが時代に合わなくなってきていると言わざるを得ません。


おわりに

結婚して子どもを持った後、家にとどまらずに社会復帰を果たす女性が増加しています。専業主婦が少なくなってきた今、働いた分だけ控除が適用される「夫婦控除制度」を導入した方が、恩恵を受けられる家庭が増えるのかもしれません。


こうした意味で、今回の配偶者控除制度の改正は大きな改善ではないといえます。高収入を得ている既婚女性も恩恵を受けられるような、抜本的な改革が必要でしょう。


記事制作/平賀 妙子(株式会社月に吠える/ライター・編集)


【ライター】平賀 妙子
1989年、三重県生まれ。広告代理店勤務を経て、ライターへ転身。
企業のPRライティングやビジネス書の編集、IT企業のオウンドメディアの執筆などに携わっている。
普段は当たり前すぎて見逃されていることにスポットを当てて、
その魅力を伝える文章を書いていきたい。

ビジネスノマドジャーナル編集部
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