【クラウドファンディングで誰もがビジネスをできる時代に】第12回:法人格は財産管理のためにある

知見・スキル
2017年05月12日

前回の記事では、クラウドファンディングを行うにあたってのガバナンスの重要性を紹介しました。
今回は、財産管理ツールとしての法人格の有効性を説明いたします。


個人の財布と事業用の財産

ビジネスとは、他者のニーズを満たすことで、その対価を得ていくものです。クラウドファンディングは対価を先取りしているようなものであり、調達に成功した資金は事業用の財産として、経営者個人の財布とは切り離して考えていくべきです。


購入型クラウドファンディングで考えると分かりやすいですが、ここで集まった資金は、商品やサービスを供給するための資金という性格を持っているのです。
商品やサービスを供給していくためには、原材料、機械設備の他に、人材も必要です。人を動かすには相応の資金が必要であり、これは経営者個人も例外ではありません。無給で何も食べずに働いていくことは無理ですので、当然、事業用に集めた資金・生み出した資金から経営者に対する報酬も捻出していきます。
クラウドファンディングで集まった資金を経営者個人の生活用口座の中で管理しようとすると、引き出した資金は商品の仕入れに使ったのか、経営者個人の生活費として使われたのか判別がしがたくなります。


例えば、生活用口座の中に100万円の残高があったとします。これがクラウドファンディングで100万円の資金調達に成功して、残高200万円になります。そこから時期を置かずに経営者個人のプライベート用の軽自動車の購入代金100万円が引き出されたとします。個人で貯めていた資金の範囲内で購入していたとしても、クラウドファンディングで集めた資金の流用のようにも見えてしまいます。
資金の使い道を明確にし、誤解を生まないようにするためにも、経営者個人の財産と事業用の財産は切り離して管理していくことが重要になります。少なくとも生活用口座と事業資金を管理していくための口座は分けておきましょう。


財産管理ツールとしての法人格

極論を言うと、株式会社をはじめとした法人格は事業用の財産を管理していくためのツールに過ぎません。経営者個人で完結する小規模な事業であれば、生活用口座と事業用口座を切り離すだけでも必要最低限の財産管理はできます。しかし、事業規模や扱う資金の量が大きくなったり、資金の移動が複雑になってくると管理が難しくなってきます。このような場面になって初めて法人格の存在が有効に働いてくるのです。


特に、経営者が複数人いる場合は、小規模な事業であったとしても口座の区別だけでは財産管理が手間になってきます。それが顕著に現れるのは、不動産契約や商用自動車といった財産の購入時です。


例えば、料理人Aと料理人Bが飲食店を共同経営するとします。起業経費は折半で出し合おうと決めたとしても、契約行為はどちらか個人の名義でしていかなければいけません。
ここでAを代表者として、店舗用不動産の購入から業務用冷蔵庫等の設備リース契約まで全てAの名義で締結したとすると、事業が上手くいかずに設備リース料が滞納した時のリスクがAに寄ってしまいます。また、仮にAが不慮の事故でなくなった場合、Bが自分だけで事業継続をしていこうと決意しても、店舗用不動産はAの配偶者や子供に相続されてしまうので余計な手間とコストがかかってしまいます。


このような手間とコスト、特定の誰かにリスクが寄ってしまうことを避けていく上では、法人格を取得して、法人として契約締結・財産管理をしていく方が便利なのです。
また、事業が好調に推移を続けていくほど、経営者の寿命よりも企業の寿命の方が長くなっていきます。経営者の交代をしていく上でも事業用の財産を法人として管理していくことで、前経営者の親族と現経営者の間でのトラブルを避けていくことができます。


法人格の選び方

個人のままでもクラウドファンディングで資金調達を図ることは可能ですが、事業の実施体制や集めた資金の使途によっては法人格を取得した方が良いケースもあります。なお、株式投資型クラウドファンディングについては、その性質上、株式を発行できる法人格=株式会社であることが必須条件です。
寄付型や購入型のクラウドファンディングであっても、集める資金の規模が大きかったり、事業期間が長期の場合は、法人として実施した方が良いこともあります。そして、どの法人格を取得するのが望ましいかはケースバイケースです。設立時の手間とコストだけをもって法人格を比較・選択していくのではなく、企業の将来像まで見据えて検討していくことが重要です。


株式会社をはじめとする会社形態が良いのか、社団・財団が良いのか、それとも組合という道を選ぶのか。事業内容によっては法人格で制限がかかっている場合もあります。法人を設立したものの選択した法人格が自社事業に向かなかったという事態を避けていくためにも、それぞれの性質と特徴を理解しておきましょう。


記事制作/ミハルリサーチ 水野春市


ビジネスノマドジャーナル編集部
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