【長時間労働は是正できるのか】第12回:傾向と対策―人事評価に対する不安と迷い 残業の多さをアピールしても評価には繋がらない

新しい働き方ブログ
2017年05月15日


1.人事評価のあり方に不満あり!評価される側に不安と迷い

NTTコム リサーチが20~50歳代を対象に行った「人事評価に対するアンケート」によれば、約3割が人事評価に対する不満を抱いています。不満理由は「評価基準が不明確」が67%と突出しています。評価の仕組みに対する不満では、「評価者の好き嫌いで評価されてしまう」が38.7%でトップでした。


あいまいな基準は評価する側にも影響します。たとえば「仕事を頑張ってしているか否か」というような基準であれば、頼りになるのは評価者の感覚だけなので、どうしても評価にブレが出ます。できるだけ公平に評価しようと思っても、そこは人間です。相性や気分による評価の偏りは避けられません。「評価者が直属の上司しかおらず、評価が一面的」(24.9%)、「上司など評価者が自分の仕事ぶりをよく把握していない」(24.6%)など、不完全な評価の仕組みに対する不満も多くありました。


アンケート結果からすれば、明確な評価基準が設定され、それが公表された上で評価の方法もマニュアル化されているような企業は少ないと思われます。あいまいな評価基準と不完全な評価の仕組みが、評価される側に不安と迷いを生じさせているといえそうです。


2.残業を評価する?それともしない?企業と従業員の意識に大きなズレ!

内閣府男女共同参画局が平成25年に実施した「ワーク・ライフ・バランスに関する個人・企業調査」によると、残業や休日出勤をしないことについては、プラス評価とする企業は約16%あり、逆にマイナス評価とする企業は約6%ありました。一方で、「人事評価として考慮しない」とした企業が最も多く全体の約74%に上っています。


ところが従業員の側から見ると事情は一変します。残業時間の長短に関わらず、残業すれば上司および同僚から「頑張っている人」だと捉えられると感じる割合が最も多いのです。


このように残業に対するイメージは、企業と従業員で大きく異なります。あいまいな評価基準に対する従業員の不安と迷いは、企業の思惑とは正反対の方向に現れているのです。


3.残業は高評価のバロメーター?あいまさが招く間違った認識

では、なぜ企業と従業員との間に大きな意識のズレが生じているのでしょうか。


答えは、あいまいな評価基準の捉え方にあります。


たとえば、売上高を基準として営業職を評価する場合を考えてみましょう。高く評価されるためには売上高を伸ばすことが必要です。そのため残業はおのずと増えます。一方、生産性(売上高/労働時間)を評価基準とする場合はどうでしょうか。売上高が同じであれば労働時間が長いほど生産性は低くなるので、むしろ残業は好ましくないという傾向にもなります。


どちらのケースでも定量的(※1)な基準を採用することで評価の公平性が保たれ、働きぶりがそのまま評価につながる点において良くも悪くも納得のいく人事評価システムだといえます。しかし売上高を基準とする場合は残業が評価されやすいのに対し、生産性を基準とする場合は残業が評価されにくくなるなど、何を基準とするかによって残業のあり方に影響します。売上高にせよ生産性にせよ、何らかの基準が示されなければ従業員は「仕事を頑張ってしているかどうか」を上司が見ているのだと考えざるを得なくなります。一見、定量的だと思われた評価基準も、それが明確に示されない限り定性的(※2)な基準となってしまうわけです。
※1:物事を数値化して具体的に捉えること
※2:物事を事象として抽象的に捉えること


では管理部門はどうでしょうか。人事部や総務部の場合、営業職のように基準を数値化することは簡単ではありません。評価はどうしても「仕事を頑張ってしているかどうか」という定性的な基準に即して行われがちです。


結局のところ職種は何であれ、上司から高い評価を得ようとすれば「仕事を頑張ってしている」ことをアピールする必要があります。多くの従業員が人事評価に際して残業をプラス材料だと感じている原因は、残業を「仕事を頑張ってしている」ことの証だと思っていることにあるのではないでしょうか。


4.まとめ

先日、駅のホームで電車を待っていると、後ろから女性2人の会話が聞こえてきました。


「総務の○○さん、いつも遅くまで頑張ってるよね~」
「要領悪いだけじゃないの??」
「あっ、そっかあ~」


会社帰りでしょうか。2人の会話を小耳に挟みながら、ふと自分の幼い頃を思い出しました。長時間机に向かっていれば、たとえ教科書の端にパラパラ漫画を書いていたとしても、両親は「頑張っている」と褒めてくれました。多かれ少なかれ、同じような経験をした方もいるのではないでしょうか。


大人になれば勉強が仕事に置き換わります。日本の労働市場では長年「頑張っているか否か」という定性的であいまいな基準によって労働能力が評価されてきたために、長時間働くことは良いことだという価値観が形成されてきました。しかし、今回ご紹介したアンケートからわかるように、会社と従業員との間には残業に対する評価のズレがあります。必ずしも長時間労働は仕事熱心であることを意味しないのです。


長時間労働をなくすためには、客観的で定量的な基準に従って人事評価が行われることが大事ですが、評価される側も残業に対する意識を改めることが必要ではないでしょうか。サラリーマンである以上、人事評価への不安は付きものですが、みなさんが思うほど残業は評価されていないのです。もし意味のない残業をしていると感じているのなら、今こそ決別の時です。長時間労働をなくすべく、勇気ある一歩を踏み出してください。


記事制作/白井龍


ビジネスノマドジャーナル編集部
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