【地方創生は実現するのか】第4回:地方創生の交付金 「ばらまき」になっているケースも?

知見・スキル
2017年04月26日

前回、具体例を出してお話ししたように、各地の自治体が地方創生の交付金を用いつつ、地域の個性を生かした振興策を展開しています。地域にもとからある「資源」や「強み」を生かしてこそ、真の地方創生が実現します。
では、各地の地方創生の試みは、大半が上手くいっていると考えていいのでしょうか?


いやいや、どうやらそう簡単にはいきそうにない雲行きなのです。地方創生の事業がまったく地域の振興に役立たず、お金のムダ使いになっているケースもあります。これではせっかくの交付金が、単なる「ばらまき」になってしまいかねません。そこで今回は、地方創生の心配される現状について、見ていきましょう。


■地方創生の事業は「目標設定」に基づき進められる

先にもこの連載でご説明したように、「地方創生の交付金が『ばらまき』になるのではないか?」という心配の声は、各方面から上がっていました。いくら政府がやる気を出し、交付金を気前良く配ったとしても......それが地方経済の活性化や、地方への人の流れを生み出さなくては、結局は税金の無駄使い(=お金のばらまき)に終わってしまいます。


国も、交付金が単なる「ばらまき」に終わらないよう、慎重に制度設計を行いました。そのひとつが地方創生の事業に「具体的な目標」を設定し、その目標の数値をクリアしているか、定期的にチェックする仕組みでした。
(この「目標数値」をクリアしていれば、交付金が有効に生かされていることになります。逆に数値をクリアできなければ、交付金が上手く生かされていないということです)


たとえば観光事業であれば、観光客の伸びなどが目安の数値になります。また雇用創出プロジェクトの場合は、地域企業がどれだけ新規の雇用をしたかが目安になるわけです。こうした明確な判断基準があれば、成功か失敗かが分かりやすいですよね。


■6割の事業が、失敗!?

ところが2016年6月、この「地方創生プロジェクトの効果測定」について、NHKがショッキングなニュースを報じました。
全国の自治体で行われた交付金事業のうち、国が特に「先進的な事例」として紹介している、75の事業についての調査報告です。
先進的な事例なので、上手くいっているのかと思いきや......
これら75事業のうち、事前に設定した「目標数値」をクリアしたのは、なんとわずか28事業しかなかったのです。


このニュースが、地方創生にとってどれだけ重大なものか、ご理解いただけるでしょうか。
なにしろここで調査されたのは、政府が特に「先進的な事例」として挙げた事業なのですから、「地方創生の優等生」というべきプロジェクトでした(つまり全国の自治体に対し、これら「先進的な事例」をお手本にしろと言っていたわけです)。


その「先進的」かつ「全国自治体のお手本となるべき」プロジェクトのうち、なんと6割以上が「目標数値」を達成できなかった......。つまり(少なくとも調査の時点では)事業として「失敗」に終わっていたということなのです。


政府がわざわざ「先進的」と認めたプロジェクトですら、この体たらくなのですから......
それ以外のプロジェクトは、さらに高い比率で失敗しているとも考えられます。


「先進的事例の6割が、『目標数値』をクリアできなかった」


この調査結果は、政府にとっても、地方創生にかかわる人たちにとっても、メガトン級の衝撃だったことでしょう。少なくともこの調査の時点では、地方創生のプロジェクトは「全国各地で大失敗した」と言われても、仕方がないからです。


■地方創生 「失敗」の具体例

国も地方も真剣に地方創生に取り組んでいるのに、いったいどうしてこんなことが起きてしまうのか。
ここでNHKのニュースでも取り上げられた、具体的な失敗例をご紹介しましょう。


福島県の会津若松市では、地域経済をなんとかして活性化しようと、「地域限定の電子マネー」という施策を実行に移しました。
この電子マネーは地元でしか使えない代わりに、地元の加盟店で使うたびに「ポイント」を貯めることができます。加えて健康診断の受診や、さらにはボランティアへの参加でもポイントが付与されます。こうして手に入れたポイントを、地元での買い物に使える......という、地域密着型の電子マネー・システムを導入したのです。


ここまで聞くと、なんだかすばらしいアイデアのように思えますよね。
住民に地元での消費をうながすのはもちろん、健康診断やボランティアへの参加など、社会のプラスになる行動を後押しする発想も光ります。この電子マネーが上手く機能すれば、地域経済を大いに活性化してくれそうな気もします。


ところが......この電子マネー、見るも無残な大失敗に終わってしまいました。
なんといっても大きな問題は、肝心の会津若松市の人たちが、この電子マネーカードのことを知らなかったことです。使うたびにポイントが貯まるメリットがあるにもかかわらず、市民のほとんどが「カードの存在すら知らなかった」というのです。


さらに致命的だったのは、この電子マネーカードを使える店舗が、実際にはほとんどなかったことです。
会津若松市は、カードを使える店舗を最低でも100店は確保しようとしたのですが、市の説得にもかかわらず、カードシステムを導入してくれたのはわずか11店舗に過ぎなかったのです。


店舗に導入を断られた大きな理由として、「電子マネー用の機器の操作が面倒だ」という点があります。
「いくら地域経済の活性化につながると言われても、レジでの作業がややこしくなっては困る」
これが、多くの店舗の本音だったのでしょう。


こうして、会津若松市の電子マネー事業はまったく機能せず、市は事業の継続をあきらめました。この事業には交付金1200万円を投入しましたが、電子マネーカードでの決済総額はたったの18万円だったといいます。言い方は悪いですが、多額の税金を投入して「笑い話」を作ったようなものですよね。


■施策が現地の実情に合っているか?

こうして失敗に終わった「地域限定の電子マネーカード」ですが、その発想自体は悪くなかったはずです。にもかかわらず悲惨な結果となったのは、まずカードの存在を市民に周知できなかったことが原因です。


そしてさらに大きな敗因として「施策が現地の実情に合っていなかった」ことが挙げられます。
いくら地域経済の活性化になるといっても、カードシステムを導入すれば、レジでの作業は複雑になります。新たに生じる業務の負担を嫌い、店舗側が導入を嫌がるのも無理のないことでした。


地方創生の事業は、あくまで現地住民・地域社会とともに進めるべきものです。いくら発想がすばらしくても、施策が現地・現場の実情に合っていなければ、事業は上手く行きません。アイデアは大事ですが、アイデアがひとり歩きしても、地方創生は成功しないのです。


記事制作/欧州 力(おうしゅう りき)


ビジネスノマドジャーナル編集部
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