【女性が活躍する社会は実現するのか】第4回:「女性の働き方」における、海外の取り組みや企業の動向

ストーリー
2017年04月20日

OECD(経済協力開発機構)が発表した2016年の「世界の女性就業率ランキング」において、日本の25~54歳の女性の就業率は72.7%で、34ヶ国中23位でした。経済的には先進国と言われている日本ですが、女性の労働環境においてはまだまだ発展途上のようです。上位にランクインしている国や企業の施策を参考に、女性が働きやすい環境をどのように実現していけばいいのかを見ていきたいと思います。


福祉国家・スウェーデンの取り組み

女性就業率ランキングで2位のスウェーデンは、フィンランドとノルウェーの間に位置する人口約980万人の小さな国です。にもかかわらず、世界を代表する企業である、ファッションブランドの「H&M」、家具メーカーの「IKEA」はスウェーデンから生まれました。このような有名ブランドを多数、輩出しているのには、整った就業環境が影響していると思われます。


働きやすさの鍵は「スウェーデン・モデル」にあり

1928年、当時の社民党党首ペール・アルビン・ハンソンが、皆が平等に暮らせる「国民の家」を作る必要性を唱えました。ここからスウェーデンは福祉国家の道を歩み始めました。


第二次世界大戦で大きな被害を被らなかったスウェーデンは復興のスピードが早く、戦後すぐに労働力不足に直面することになります。そこで、他国よりもかなり早い段階で女性が社会で働くようになりました。ですが、女性が社会進出をすることで子育てや介護に支障を出てしまっては、元も子もありません。そこで政府は、国民全員が手厚い福祉を受けられる代わりに、税金の負担額を上げる「高福祉高負担」を導入しました。これにより、年金と医療費だけでなく介護手当や再就職支援についても、社会保障で賄えることになりました。


国が実施する施策としては、高所得者には高い税金を課して、そのお金を社会保障における給付に変えて低所得者の生活を保証する「再分配政策」を行うのが、一般的な手法です。しかしスウェーデンは、これに加えて「同一労働・同一賃金」のルールを適用。労働者が企業との対等な労使関係を築けるだけではなく、所得格差を最小に抑えることに成功しました。


この一連の取り組み「スウェーデン・モデル」が、女性就業率の高さにも、大いに影響していることは明らかです。


女性も働くことが当たり前の社会

次に、女性の就業促進や出産後の復帰における政策・施策を見ていきましょう。労働力の不足によって女性の社会進出が促された結果、女性の就業率は上がり、2013年時点では20歳〜64歳の83%が労働市場に参加しています。この事実は同時に、専業主婦がとても少ないことを意味しています。


それでは、なぜ子育てをしながらでも働くことができるのでしょうか。その理由の一つに、フルタイムとパートタイムの就業において、条件の差異がないことが挙げられます。日本やその他の国と違い、スウェーデンではパートタイムで働く人も正規雇用となり、社会保険など条件面もフルタイム労働者と同じなのです。
また、税金や年金は個人がそれぞれ支払うため、配偶者の収入を気にして労働を控える必要はありません。こうした税制も、女性が伸び伸びと働ける要因となっているようです。


さらに子育ての面でも、優遇措置があります。男女問わず育児休暇を取得することができ、企業は最大480日までの所得を補償。つまり約1年半、有給で育児休暇を取ることができるのです。なお、男性の取得率も高く、2013年時点では25%が利用。日本人男性の4%(2016年度)と比べると、6倍もの開きがあります。


参考文献:
スウェーデン・モデル グローバリゼーション・揺らぎ・挑戦


IT人材の豊富さで急成長中のリトアニア

女性就業率ランキングで5位にランクインした、東欧・リトアニアの現状も見ていきましょう。リトアニアは人口285万人、国土面積が6.5万平方キロメートルの小国です。1940年から約50年間はソ連の支配下にありましたが、1990年に独立を果たしました。


その後著しい成長を遂げ、1人あたりの名目GDP(国内総生産)では、1995年に2,138USドルだったのに対し、2016年には13,345USドルと5倍以上も伸びています。その理由のひとつとして上げられるのが「エンジニアなどIT人材の豊富さ」です。同国では16〜24歳のうち約97%の若者が、国が認める教育機関でITスキルを習得しているのです。


これにより、人材不足といわれている世界中のテクノロジー企業への就業が可能となることはもちろん、ITをはじめとしたスタートアップ企業も数多く生まれてきます。少し遠回りのようにも見えますが、人材を育てることで国の生産性を高めていくという好事例です。さらに、企業の成長を促す「アクセラレーター」が提供するプロジェクトに参加すれば、最大で14,000ユーロ(約160万円)の資金を受けとることもできます。


ちなみに同国だけでなく、ラトビアとエストニアを合わせた「バルト三国」では、他国よりもいち早くIT人材の育成に着手しました。これから成長する国家として、多くの投資家たちが有望視しているのも頷けます。


500万人の女性が社会で活躍できるスキルを

国だけではなく、企業でも女性の就業を後押しする取り組みをはじめています。


ビジネススキルの向上と、起業家の支援を推進

日本コカ・コーラ株式会社は、「5by20(ファイブ・バイ・トゥウェンティ)」という運動を2015年から開始しました。「2020年までに世界の500万人の女性を支援する」ことを目標に、消費活動の2/3を担っているといわれる女性が、ビジネスに参加することによって経済的な影響力を高めると同時に、地域や社会のニーズに応えるさまざまな取り組みを行っています。ビジネススキルはもちろんのこと、財務や資産管理に関する研修のほか、ビジネスに関する情報交換や相談が出来る場や、コミュニケーション面でのサポートも提供しています。


なお、現在「5by20」は50ヶ国以上で行われており、女性の活躍が経済にもたらす影響力を押し上げようとしています。日本においては、コカ・コーラ社が生産する製品の原材料に関するプロジェクト、「茶葉生産者女性支援プログラム」を実施しました。取引産地基準の研修を行うだけでなく、広い横のつながりのない農業に従事する女性同士の交流の場にもなっており、これまでに800名以上が参加しています。


アイディアを集めて実践し、自分たちから変化を起こす

Googleも、大規模な取り組みを始めています。そのひとつが、アジア太平洋地域の女性が人生で直面する問題の解決を目指す「Women Will」です。


この中の「未来の働き方プロジェクト」では、他企業と協力して、働く環境を改善するため、職場でよくある問題の解決策をレッスン形式で提案。たとえば「働く場所を自由にする」ことに対して、生産性や時間、業務の共有といった面でぶちあたる問題へのアドバイスをしています。


また「♯HappyBackToWork」では、出産・育児によって退職してしまう女性を減らすために、社会で実践したいアイディアを集めてアクションを起こす取り組みも実施中です。一つのアイディアにどれだけのサポーター(企業)が実践しているのかが数字でわかり、アイディアが生まれた経緯も知ることができます。


たとえば、あるサポーターは「男性には、2週間の育休より1年間の定時上がりを!」のアイディアに賛同。女性にだけ仕事と家庭の両立を促すのではなく、労働に比重を置きがちの男性にも、子育てに参画しやすい環境を整えることが大切だという思いのもと実践し始めているそうです。


おわりに

スウェーデンやリトアニアでは、国の制度や教育方針により、女性の就業や社会復帰が容易になる環境が整っています。一方で日本は国が主体となるのではなく、企業が動くことで多くのサポーターが参画し、働く女性の環境づくりの整備が広がりつつあるようです。


「Women Will」のPR動画の中で、奥様の家事を「手伝う」のではなく「シェア」すると言い、言葉遣いから変えることを意識している旦那様がいました。些細なことですが、一つひとつの家庭単位の心がけから社会の流れは変わっていきます。今後は「多くの女性が働く社会」における新たな価値観が、少しずつ作り上げられていくのではないでしょうか。


記事制作/平賀 妙子(株式会社月に吠える/ライター・編集)


【ライター】平賀 妙子
1989年、三重県生まれ。広告代理店勤務を経て、ライターへ転身。
企業のPRライティングやビジネス書の編集、IT企業のオウンドメディアの執筆などに携わっている。
普段は当たり前すぎて見逃されていることにスポットを当てて、
その魅力を伝える文章を書いていきたい。

ビジネスノマドジャーナル編集部
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