【フリーランスと働き方改革】第5回:なぜフリーランスの財布にカラオケ店の領収証が増え続けるのか

新しい働き方ブログ
2017年04月18日

フリーランスの生活ぶりといえば、「満員電車とは無縁である」とか「究極の職住近接である」とイメージする人もいると思う。僕の身の回りには実際にそんなスタイルで仕事を続けているフリーランス・ワーカーがいる。世の中には満員電車に一切乗ることなく、快適な自宅兼オフィスで高いレベルの収入を確保している人がいる。


僕自身はどうかと言うと、1週間の中でも結構な確率で満員電車に揺られ、日中に自宅で仕事をしていることはほとんどない。「在宅ライター」という言葉があるが、僕は「基本的に在宅ではないライター」だ。


フリーランスとして生きている以上、時間と場所にとらわれない働き方を実現することには強い興味を持っている。とはいえ現状は、収入ベースで考えてもやりたいことベースで考えてもまだまだ遠いようだ。フリーランスとして、どのような働き方を実践しているのか。一つの例として書いてみたい。


「取材に出向き、記事を書く」という原則

僕がライターとしてフリーランスになったとき、一つだけ決めていた仕事選びの基準があった。それは「自分で取材に出向き、記事を書く仕事である」こと。案件の特性や面白さ、取引先との関係性などによって例外はあるものの、これは原則譲らないようにしていた。


理由は二つある。一つは、「取材あり案件」のほうが一般的に高単価であること。駆け出しのライターが取材なしで書ける仕事には「ネットなどから情報を集めてまとめる」といった案件が多いのだが、それではどうしても低単価の仕事が中心になってしまう気がしていたのだ。


もう一つの理由は「単純に取材活動が好き」ということ。記事執筆であれ求人広告制作であれ、初対面の人から人生に対する考え方を聞いたり、知らない業界の話を聞いたりするのは実に刺激的だ。ある取材現場でのインプットが新たな知識となり、別の取材現場でのアウトプットにつながっていくという「学びの要素」も大きい。ありがたいことに、注目を集めるスタートアップ経営者や大企業トップなど、さまざまな立場の方を取材する機会に恵まれた。


機密性がある静かな環境で電話のやり取りをするには......

とはいえ、取材現場を訪問するということは、物理的な距離と時間に縛られることを意味する。自分以外に自分の代わりはいないから、当然ながら決めたスケジュールには何としてでも対応しなければならない。


僕は子どもの保育園問題もあって(詳しくは次回で書きたい)東京の郊外に住んでいるため、都心に出るには片道1時間ほどかかってしまう。例えば朝の9時から取材が始まる場合、徒歩の時間も含めると概ね7時過ぎには自宅を出ることになる。まさに郊外から都心へ向かう通勤ラッシュの時間帯だ。


都心ならまだいい。ときには「朝9時に茨城県」ということもある。取材現場に到着してしまえば全力で仕事を楽しめるのだが、夜も明けきらないうちに家を出て2時間近くも満員電車に揺られていると、さすがにしんどいものがある。定常的に通勤で乗るわけではないから、なおさら堪えるのかもしれない(ここまで書いておいて、何ともワガママなことを言っているのは自覚している)。


取材案件ばかりを引き受けていると、ときには週に10件ほどの現場へ出向くこともある。Googleカレンダーは取材アポイントでほぼ埋まっている状態。ひたすら商談アポイントを取ろうとしていたかつての営業職時代のようだ。朝早くに出て夜遅くに帰宅することもある。帰りの満員電車は、なおさら堪える。


取材に動きながら、移動の合間にカフェで原稿を書く。電話取材など、機密性がある静かな環境で音声のやり取りをする場合は貸し会議室やカラオケ店を使う。立地にもよるが、平日の昼間のカラオケ店は比較的空いていて、隣室の歌声が響くこともなく、落ち着いて仕事ができるのだ。フリータイム料金なら大抵の貸し会議室よりも安いし、長居しても煙たがられない。こうして「仮想オフィス代」の領収証が増えていく。


そんな日が続けば、自宅は職場というよりも、ほぼ寝るためだけの場所になっていく。ときには寝られないこともある。


フリーランスも、時間と場所に縛られている

と、散々愚痴っぽく綴ってきたが、冒頭で書いたようにこうした働き方は自分自身が望んでいるもの。週に10件も取材が入るなんて、実に理想的な状態だ。「今週は取材スケジュールが空いているな......」という状況は極力避けたい。こうして汗水垂らして取材し、必死でまとめていく原稿の一つひとつが、自分の血肉になると信じているのだ。


人によっては「まさにノマドワーカーそのもので楽しそうだね」と感心してくれるし、「毎日満員電車に乗らなくてもいいだけマシだ」と真っ当なことを指摘してくれるし、「いつまでも取材・取材とこだわり続けていたらライターとしての発展性がないよ」と深いアドバイスをくれる。どれも正しいと思う。とはいえ今のところは同じスタイルを繰り返しながら、2年近くごぶさたしてしまっている自治体の健康診断に行かなきゃ、と考えている。


それが、満員電車にしょっちゅう揺られながら、カラオケ店の領収証を大切に財布にしまっているフリーランス・ライターの日常だ。


ライターという職種を見ている限り、僕のようなスタイルの人は少ないのかもしれない。しかしフリーランスの世界は幅広い。むしろ異なる職種には、似たような日常を送っている人が多いのではないかと思う。フリーランスは、会社員とは違った意味で時間と場所にとらわれているという話。


記事制作/多田 慎介


【ライター】多田 慎介
フリーランス・ライター。1983年、石川県金沢市生まれ。大学中退後に求人広告代理店へアルバイトとして入社し、転職サイトなどを扱う法人営業職や営業マネジャー職に従事。編集プロダクション勤務を経て、2015年よりフリーランスとして活動。個人の働き方やキャリア形成、企業の採用コンテンツ、マーケティング手法などをテーマに取材・執筆を重ねている。

ビジネスノマドジャーナル編集部
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