【クラウドファンディングで誰もがビジネスをできる時代に】第8回:マイクロファイナンスの担い手

知見・スキル
2017年04月14日

前回の記事でも触れましたが、経済合理性の観点だけでみると、中小企業は融資を受けにくく、融資を受けるには高い金利を受け容れざるを得ないという課題があります。この課題を解決していくために信用組合や信用金庫といった協同組織金融機関が作られたわけです。そして、協同組織金融機関をもってしても融資が難しい分野でクラウドファンディングが活用され始めています。


今回は、マイクロファイナンスの担い手として、クラウドファンディングがどのように機能しているかを紹介していきます。


マイクロファイナンスのニーズ

日本政策金融公庫が実施した「2016年度起業と起業意識に関する調査」では、起業者の54.3%は100万円未満の資金で起業しているというデータが示されています。扱う商品やサービス・事業形態によって異なるのでしょうが、100万円程度の元手があれば何らかのビジネスを始めることは出来るということが分かります。


一方、「起業関心層」に対してまだ起業していない理由を聞いてみると、「自己資金が不足している」という回答が半数以上を占めています。
起業関心層と実際に起業した人の間で必要と考える資金規模にギャップがあるのかもしれませんが、「起業に必要な資金は比較的少額だが、それを準備出来ない層も一定数いる」と捉えることもできます。


そして、起業にあたって金融機関からの借入があると答えたのは11.9%です。これは、全てを自己資金で賄おうとする意識が強いのか、はたまた金融機関から借りることができなかったかと考えるかで調査結果の評価が大きく異なってきますが、金融機関が起業者・起業関心層の資金ニーズを捉えきれていないということは言えそうです。


ここで興味深いのがmakuakeが2016年9月に公表したサービス開始からの3年間の実績です。1案件あたりの平均調達額は106万382円とのことであり、日本政策金融公庫が調査した起業資金の規模と同程度です。この2つのデータを合わせてみると、起業者・起業関心層は、必要としている100万円程度の資金について、金融機関からの借入ではなく、クラウドファンディングによる調達を選択しつつあるという実態が浮かんできます。


クラウドファンディングというと1千万円・1億円規模の大型案件の報道ばかりが目立ちますが、実際のところは小口資金・マイクロファイナンスのニーズの受け皿として機能していると見るのが正しいのではないでしょうか。


スモールビジネスの資金ニーズ

江戸時代の日本には「百一文」という金融形態がありました。日銭貸しとも言われますが、朝に100文を借りて、その日のうちに1文の利子を加えて返済するものです。
江戸末期に記された『守貞謾稿』には、朝に400文借りてその日の晩に404文を返す行商人の記述があります。朝に借りた400文は商品の仕入資金となり、それを行商で売りさばくことによって生まれた売上の中から元金と利子相当分を返していくのです。年利換算300%超の高利ですが、その日のうちに返すという前提であれば利子というよりも手数料くらいの感覚だったのでしょう。


400文の行商人の話を現代社会の中で考えると、朝に23,000円借りて、夕方に23,230円返すといった具合です。年商1000万円程度の小規模事業者がメインユーザーの金融というところでしょうか。
※江戸末期の銭湯料金8文・2017年4月現在の都内銭湯料金460円から、1文=57.5円と試算。


makuakeに代表されるような現代の購入型クラウドファンディングは江戸時代の百一文と似ているところがあるかもしれません。
購入型クラウドファンディングでは、調達に成功した資金を元手に商品を準備し、資金提供者に還元していきます。つまり、調達した資金の使途は百一文と同じく、商品原価に充てられているのです。プラットフォームに支払われる調達成功額に応じた一定割合の手数料は、百一文の一文分と通じるものがあります。
江戸時代の百一文が担っていたマイクロファイナンスの機能を代替しているとも言えるのではないでしょうか。


マイクロファイナンスとしての利点

購入型クラウドファンディングは、中小企業向けのマイクロファイナンスとして大きな可能性を秘めています。まず利点としてあげられるのは、良くも悪くも事業規模に見合った資金しか調達できないという点です。


江戸時代の百一文の場合は、借りた資金規模に見合った売上・利益をあげられないと返済が困難になり、債務だけが積み重なっていきます。しかし、購入型クラウドファンディングの場合は、調達成功額=売上とも言えますので、市場ニーズを見誤って多額の債務を負うといった事態を避けることができます。また、資金調達が不調に終わった場合は、市場ニーズが低いということで、事業着手前に計画を見直す機会も与えられます


makuakeの3年間の実績を見ると、複数回利用するリピーター層も一定程度いることが分かります。今後、購入型クラウドファンディングは中小企業向けのマイクロファイナンスとしての役割を増していくかもしれません。


記事制作/ミハルリサーチ 水野春市


ビジネスノマドジャーナル編集部
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