【ワークライフバランスを考える】小室淑恵「仕事のデッドラインを決めて、ワークとライフを切り分ける」(第2回)

知見・スキル
2017年03月24日

【第2回】

少子高齢化が進む中、日本社会全体の労働力不足や企業の生産性低下、それに伴う日本人の働き方の見直しが急務となっている。この課題に国や企業はどう対峙していけばよいのか? その課題解決の糸口を探るため、多くの企業や組織にワーク・ライフバランスに関するコンサルティングを提供する株式会社ワーク・ライフバランスの小室淑恵氏にお話をうかがいました。


*本連載のインタビュアーは、森戸裕一さん(JASISA/一般社団法人 日本中小企業情報化支援協議会)に担当いただきました。


株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長/小室淑恵さん

今回の連載でお話を伺ったのは、「福利厚生ではない、経営戦略としてのワークライフバランス。」を謳い、様々な企業に働き方のコンサルティングを提供している株式会社ワーク・ライフバランス代表の小室淑恵さんです。


家で仕事をするのは子供の虐待?

森戸:

私が今、行政や大手企業とタイムマネジメントの話をしていると、残業=悪、仕事を家に持ち帰ってはいけないよね、という話になって、仕事をし過ぎることは悪いことだ、といった考え方が多いように感じるのですが、やはりワークとライフ(プライベートの時間)を明確に切り分けることは重要だとお考えですか?


小室:

人間には「絶対的に仕事をしてはならない時間帯」というのがあると思います。
家に帰って子供にご飯を食べさせて、その後すぐにパソコンに向かって仕事している、という人が今たくさんいますが、その方たちは会社では短時間勤務という扱いなので、本来ならば5時で業務終了しているはずなんです。
けれど今は家に持ち帰れるツールがあるので、帰宅しても子供の顔も見ずに、また仕事に戻ってしまっている。しかもそれが一円の給与にもなっていないんです。


なぜそうなってしまうのかというと、今はパソコンさえあればどこにいてもチャットツールなどで他の人たちが仕事しているのが見えてしまうからです。
他の社員がどんどん仕事を進めているのをチャットで見ると、自分もそこに乗っかっていかないと遅れてしまうと思ってしまう。
私も仕事やっていますよ、今もオンライン状態ですよ、という姿勢を示していかないとキャリアから弾き出されてしまう、という感覚、不安を持っているんです。


でも親が目の前にいるのに子供のことを全く見ていない、というのはほとんど虐待に近い状態です。そうなると、家に早く帰ったことに何の意味もないどころか、むしろ子供を傷つける時間になってしまっている。
仕事にデッドラインがない、仕事のオンライン状態がずっと続くというのは本当によくない状況です。
もちろん一人一人の仕事の仕方というのは朝型、夜型などフレキシブルでいいし、他の人が働いていない時間に働く権利も大切です。でも、相手が仕事をしていない時間に無節操にメールやメッセージを送りつけて、本人にそのつもりはなくても、相手に何か返答を求めたりしているかのように感じさせるのはよくありません。
皆、ある時間を過ぎたら情報から離れて集中して家族と向き合う時間が保証されているべきです。


じゃあどうすればいいのかというと、要はキチッとルールを決めればいいんです。弊社も、働く時間は人によってまちまちだけれど、その時間働いていない人の聖域は守る、というやや高度なルールを導入しています。


今、ドイツなどでは夜間にメールサーバーを止めてしまうという会社があります。
フォルクスワーゲンなどは、夜の特定の時間帯に送信されたメールはサーバーがエラーとして送り返して自動的に削除してしまう。
日本もそうした取り組みを学んで、現代の新しい働き方に合わせた新しいルールを作っていくことが大事なのだと思います。


日本には日本のルールを

森戸:

そうですね。日本人は基本的に真面目ですからね。欧米ではプライベートはプライベートだと完全に割り切ってしまいますが、日本人はそれができない。


小室:

そのあたりの考え方は全く違いますね。欧米の人は有給休暇を100パーセント消化しますからね。仕事を休むということにすごく高い優先順位を置いている人たちと日本人の考え方は根本的に異なります。
だから日本では欧米と同じルールというわけにはいかないんです。日本人の気質に合わせた日本独自のルールを作らないと駄目だと思います。


(次回に続く)


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