【地方創生・小豆島】島のモデルは「いかに関係性を良くして参加者を増やすか」。都会と田舎の関係性を創る事に挑戦する株式会社アスノオト代表・信岡良亮さん(前編)

ノマドのキャリア
2017年01月02日

小豆島(しょうどしま)は瀬戸内海に浮かぶ離島。人口約29000人、面積約150k㎡。瀬戸内海では淡路島に次いで2番目の大きさだ。オリーブ・醤油・そうめん・佃煮・ごま油などの生産が盛んで日本有数の名産地となっているほか、小説「二十四の瞳」の島としても知られる。近年、若者・子育て世代を中心に移住者が増加。瀬戸内国際芸術祭が開催されたり、小豆島高校野球部が甲子園出場を果たしたりと明るいニュースが多い。


首都圏への人口・商業施設の集中から脱却を図る「地方創生」が叫ばれる中、人気のある離島ではどのような地域づくりが行われているのだろうか?そこで、小豆島へ5年前に移住した筆者が、小豆島で活躍する企業・事業・人について取材・発信していく。


第5回は、小豆島よりも小さな島・島根県隠岐諸島の海士町で株式会社巡の環(めぐりのわ)を仲間とともに創業し、現在、東京で都会と田舎をつなぐ事業を展開される株式会社アスノオト代表・信岡良亮さんのセミナーを取材しました。
前編では、島へ移住するまでの経緯と事業の立ち上げまでの様子をお伝えします。


人口2300人の島で仲間とともに起業

小豆島は人口28000人、本土からフェリーで1時間と伺っていますが、海士町は人口約2300人、本土からフェリーで3時間という地理的不利な環境です。しかしながら、ここ10年間でIターン者が400人以上、人口の約2割が移住者となっています。


僕はそこで会社を立ち上げまして、最終的には島に大学を作りたいと思って教育事業を行っています。ソフトのコンテンツから作っていき、企業研修や地域で活動したい方のための養成コースなど、教育事業を基軸に地域づくりやメディア事業などを行っています。全体で8名の雇用、売上6000万円くらいです。小さな会社の話なので、大きな成功モデルではなく、小さな挑戦事例として皆さんが今学びたい事の刺激物として存在できればと思っています。


僕自身は同志社大学を卒業後、東京で先輩が起業するというので付いて行って、ウェブ制作をしていました。右も左もわからないまま進んできて、1年半位経って余裕が出てきた時に読んだ本で「経済が加速すればするほど、地球が悪くなっていく」ということが書かれていた。いかに成長を減速させるかという話の一方で、会社に行くといかに成長するかという話のギャップがすごくて、心と体のバランスを崩して会社を辞めました。


そのころ、海士町の町長が書かれた本「離島発 生き残るための10の戦略」(山内道雄著)と出会って、すごい島があるのだなと知りました。島まるごとでの持続を目指していて、よそ者若者ばか者大歓迎と書いてある。面白い島があるんだねという話をしていた時に、友達の友達くらいの人が既に移住をしていたのを知りました。
島に大学を作りたいと、後に一緒に創業する高野と話していて、島に行ってみたんです。3泊4日色々な人に会わせてもらったのですが、会う人会う人真剣で本当に楽しそうに生きていた。その時に、同じタイミングで同じようなことをしようとしている人がいるよと阿部を紹介されました。今度来るときには会社を創りに来るのでよろしくお願いしますと言って、25歳の時に移住、3人で起業しました。



島に雇用を創出したい。手探りでのスタート

そもそも25歳で、1年前まで知らなかった3人で起業をしました。阿部は半年位かけて準備をしてきていて、それが出会って3回で一緒に会社を創っている。大学が創りたいという夢だけがある状態でしたが、ガイアユニバーシティーという地球のことを地球で学ぶというアメリカにある大学を参考にしました。その大学では学位を出していて、地域ごとの大学を母国語で作れるというシステムでした。それをもとにジャパンセンターが創れるのではと考えたんです。


行くなら雇用を創りたいと思っていました。なぜなら、いろいろな生き方を模索したい人がたくさんいることを東京時代に身をもって知っていたからです。いろいろなイベントに行くと問題意識の強い人達が集まっていて、ある参加者が「実際土日に地球にいいことをしようとするんだけれど、月から金までは大量生産しているんだよね~」という。なんで会社辞めないんですか?と聞くと「本当は会社を辞めて、田舎で農業とかしたいのだけれど、実際雇用がないからさ」という話をされる。月曜から金曜まで地球に悪い事をしていて、週1ボランティアベースで地球にいいことしようというのは絶対地球に勝てないなと思いました。


2007年当時、海士町にはIターンが100人くらい来ている時期でしたが、自分で起業するという方はそんなにいませんでした。大学が創りたかったけれど、はじめから島の人に言うと怪しまれると思って、「何する会社なの?」と聞かれたら「まだ決まっていないんですよ」と答えていて余計怪しかった(笑)。お仕事としては3つ話がありました。


1つ目はweb制作で東京時代のクライアントがそのままお願いしてくれたりしました。始めは僕が3人中2人分稼いでいて、高野は地域の水産加工場の施設に入っていって、計画的な阿部は貯金を使い、なるべく島の人と仲良くしようということで飲みニケーションをしていました。僕らがIターンの若者だけで起業する人たちだったので、行政も町で抱えていたプロジェクトを「ちょうどいいからこいつらにやらせよう」と任せてくれたり、他に民宿の送迎を受けたりして、2人で1人分稼いでいた形でした。


島って過疎化していくと仕事が減るかと思いきや、そんなことはないんですね。町の中であぶれていた仕事をするのに、若者3人は適任でした。僕らは、町がやりたかったが実行部隊がおらず実現できなかったことを引き受けるのに、ちょうど上手くはまる人数でした。はじめは「AMAワゴン」というワゴンで東京から人を連れてくる事業があって、そんなことをしていました。海士町に既にある事業とバッティングしないようには気を付けていました。


2つ目は教育事業で、現状2泊3日で6万円いただいていますが、それでも人が来てくださっている。そういうパッケージができるまでに「AMAワゴン」などの事業を少しずつブラッシュアップしていきました。島の中の人からお金をいただくのではなく、島の外の人から一緒にお金をいただくチームを作ることをしていました。
もともと大学を創るときに、どこかのすごい先生を呼んでくるというのは違うなと思っていたんです。島にいる人たちって、暮らし人という観点からみるとすごい先人たちで、この島はすごくサスティナビリティ(持続可能性)にあふれていると。そういう想定のもと、島の人たちを先生にしようと。その舞台とパッケージの仕方をツアーという形で教育事業の基礎を創っていきました。


3つ目に「海士WEBデパート」というのを立ち上げました。正直人口2300人の町なので、事業として儲かるものではないんです。でも何故やったかというと、そういうものがあるからこそ一緒に島の外を向いて、同じ方向を向く仲間になれる。信頼関係が強まって、教育事業のコンテンツ創りに役立ちましたね。


海士の行政は動きすぎて怒られている行政。そこに自分たちが上手くはまった。

もともと海士町の行政は、自分たちでよく動いていたんです。「外の人たちが勝手に来て町をかき乱して帰っていく」ような話がよくありますが、海士町の場合は中の人が大変にかき乱していました(笑)。役場の40~50代の課長職たちが、町長が責任を取ってくれるから、やりたいことをやっていたんです。そこにIターンの若者が慕って付いていく構造ができていたんですね。


島に住んで2~3年した頃、野外の音楽フェスをやろうと思って、共催してもらえないか町に頼みに行ったことがありました。「野外でやりたいのですがクレームとか大丈夫ですかね」と聞いたら「祭りはクレームが来るぐらいのほうが面白いわい」と言う。海士の行政は動きすぎて怒られている行政で、散々やんちゃしてきた方たちだから、イベント慣れ・クレーム慣れをしているんですね。外から来る人間を大量に受け入れていたので、Iターンというくくりではなく、何がしたい個人なのかで見ていただけるようになっていました。


また、自分たちが株式会社を立ち上げていたことも大きいと思います。事業って、10仕掛けて1当たればいいというところがありますが、行政の場合は税金を使っているのでそういうわけにいかないですよね。島で民間で頑張っている方からそのあたりが評価されて「想いを持って株式会社まで立ち上げたお前らは本気なんだろう」と思ってもらえました。アクティブに動いてくれる仲間として、町民の方が仲良くしてくれたのが大きかったと思います。



(後編へ続く)


取材・撮影/城石果純


【専門家】城石 果純
早稲田大学人間科学部卒業後、株式会社リクルートに入社。
入社2年目に第1子を出産した事で、時間あたり生産性の概念に興味を持つ。
第2子出産時に小豆島に移住。それ以後、時間と場所に制約を抱えながら
MVP・通期表彰などの事業表彰を獲得し続けた事で、
リクルートグループがリモートワークに取り組むきっかけを作った。
現在は、「地域と組織のサポーター」としてフリーランスで活動。小豆島在住の3児の母。
地域の良いものを掘り起こしてコーディネートする事と「ひとのチカラ」を活かす事を大切にしている。

ビジネスノマドジャーナル編集部
専門家と1時間相談できるサービスX-bookを介して、企業の課題を手軽に解決します。業界リサーチから経営相談、新規事業のブレストまで幅広い形の事例を情報発信していきます。
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