【事例から学ぶ働き方改革】第1回:AIを活用して週休3日制を実現 ヤフー株式会社(前編)

新しい働き方ブログ
2016年12月26日

最近、メディアなどでもよく目にするようになってきた「働き方改革」。2016年9月27日に第1回「働き方改革実現会議」(首相官邸HP http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/actions/201609/27hatarakikata.html)が開催されたことで、国、地方自治体、企業の動きがますます加速されることは間違いない。


しかし、ひとことで働き方改革といっても、同一労働同一賃金、長時間労働の是正、テレワーク、外国人材の受け入れまで、政府が取り上げただけでも9つのテーマがあり、万能な解決策はない。つまり、一社一社、一人ひとりが働き方を考え、変えていかなければならない時代が来たということでもある。


そこでビジネスノマドジャーナル(BNJ)では、先進的な働き方改革に取り組んでいる企業を、シリーズで紹介。どのような課題があり、それに対してどんな取り組みを行っているのか、また、取り組みが功を奏しているのかについて、明らかにしていく。

第1回目は、週休3日制で話題となったヤフー株式会社について取り上げる。


■働きやすさだけが目的じゃない。労働生産性を高めるための働き方改革

2016年4月〜6月期(四半期)の決算で、純利益は6%増の355億円、売上高は85%増の2042億円と利益を拡大しているヤフー。傍からは堅調に見えるが、アスクルや一休を子会社化したことによる利益増で、実質的には利益は伸びていない。


さらに、2012年に4000人弱だった社員が現在5800人を突破したことを踏まえると、人が増えているほどには、利益が増えていないという状態。宮坂社長がことあるごとに触れているように「労働生産性」は決して上がっていないのである。


労働生産性のほかに、もうひとつ改革を急ぐ理由がある。それが「人気企業ランキング」だ。たとえば、DODA転職人気企業ランキング2016(https://doda.jp/guide/popular/)によると、検索エンジンやネット広告の分野でライバル視しているグーグルが1位なのに対し、ヤフーは13位にとどまっている。人気ランキングで同業他社より下位であるということは、個人に選ばれていないということ。優秀な人材を確保し、成長を続けるためにも、働き方改革が必要なのである。


これまでは人材の流出防止や女性・シニアの活用、働きやすい環境づくりという点で語られることの多かった働き方改革だが、ヤフーではここを最終目標には置いていないことが窺える。


■スマホ時代に合った働き方変革を起こす

ヤフーでは最近、矢継ぎ早に働き方改革を実施している。代表的なものを以下に列挙する。


・どこでもオフィス
月5日まで、自宅やカフェなどオフィス以外で仕事ができる
・副業ができる(要事前申請)
・通年採用
新卒一括採用を廃止し、全職種で30歳以下のポテンシャル採用を実施
・フリーアドレス
・新幹線通勤
・健康増進の施策
社員食堂「BASE」、スマホのデータを活用し、食事指導などを行う


『どこでもオフィス』は以前からあったが、適用が月2日のみだったのを、2016年10月より月5日に拡充。健康増進の施策については、「チーフ・コンディショニング・オフィサー(CCO)」を新設するなど、力を入れている。


■人間らしい働き方をすることで、人間にしかできない創造性豊かな仕事ができる

数ある働き方改革の中でも特筆すべきなのが、全社員を対象とした週休3日制だ。まだ検討段階ではあるが、労働時間の増加や給与の減額はないとされているところが、先行して実施している他社とは決定的に違うところだ。
なお、3連休を取れるということではなく、現状の週2日の休みに加えて、自分の好きなタイミングで1日休みを取れる制度になるとのことで、1〜2年内に試験的な導入を予定している。


代表取締役社長の宮坂氏は、週休3日制を検討している理由について「経済的な充足に加え、自由な時間の増加がないと豊かとはいえない」と話す。


また、最高執行責任者の川邊氏も、「スマートフォンがあればどこでも仕事ができる環境が整いつつある中で、社員がより自身の興味があることや勉強などに時間を費やし、「才能と情熱を解き放つ」ことが、生産性の向上につながるのではないか」と説明。


さらに、「まだ可能性の段階ではあるが、近い将来、単純な作業はAIや機械学習に任せて、人間はより創造性が豊かな仕事をすることで、生産性を上げることを目指している」という。


■日本中の企業が週休3日にならないと意味がない

ヤフーが9月末に週休3日制の導入を検討されていることが報じられて以降、世間では大きな反響が起こっているが、一人ひとりの職業やライフスタイル、考え方などによっても感じ方は大きく違ってくるだろう。


では、一般の人はどう感じているのだろうか?マイナビニュースが行った、『勤め先に「週休3日制」を導入してほしい?』というアンケート(2016年11月10日、男女306名/http://news.mynavi.jp/news/2016/11/10/055/)によると、「はい」が53.6%、「いいえ」が46.4%と、賛否が分かれる結果に。
また、朝日新聞による同様のアンケート(2016年11月12日、http://digital.asahi.com/articles/DA3S12651652.html?rm=150)でも、「週休3日制を歓迎する」が46%、「歓迎しない」が54%と、拮抗している状態だ。


まず賛成派の意見を見てみると、「給料が同じなら休みは多い方がいい」「集中して勤務することになるので効率的になる」「少子化対策」など、単純に休みが増えることを歓迎する声が多い。


一方、反対派の意見では「休みが多くてもすることがない」といった意見のほか、「休みが増える分、1日にやらなければいけない仕事が増えるし、1人への負担も増える」「パートや非正社員は収入が減るのでは」「取引先に迷惑がかかる」「業績が下がる」「一部の有名企業が取り組んだとしても、しわ寄せが中小企業にくる」など、会社や社会全体の影響を懸念する声も目立つ。


とはいえ、おそらく反対派であっても、休みが増えるのは嬉しいはず。だが、負担が増えたり収入が減るといったデメリットの方が大きいため賛成しづらい、という本音も見え隠れしているように思う。


■変わらぬ労働時間、収入減・・・メリットばかりではない週休3日制

しかし実際には、わたしたちの期待通りにはいっていないようだ。以下にまとめた、週休3日制の3つのタイプをご覧いただきたい。
(なお3つのタイプは、筆者の調査によりメディアで取り上げられていたものの中から形態ごとに分類したもので、すべてを網羅しているわけではない)


<労働時間据え置き型>

ユニクロGUを展開するファーストリテイリングでは2015年10月より、地域限定正社員を対象に週休3日制を導入。ただし、フルタイムの勤務時間が1日8時間労働×5日=40時間に対し、週休3日制では1日10時間労働×4日=40時間と、労働時間は変わらず、また、繁忙期に当たる土日には休めないという制約がある。そうなると、通勤時間を減らすというメリットはあるが、1日の負担が増えるだけで結局は何も変わらないのでは?という疑問も残る。
なお、モンテローザチムニーなど大手飲食チェーンでも、同様のタイプの週休3日制を導入し、"働きやすさ"をアピールしている。


<フリーダム型>

人材派遣業を行うシーエーセールススタッフでは「気分で出勤」制度を導入。既定の2日以外の休日を自由に勤務できる日として、やむを得ない対応のみオンラインやテレワークで行えるというもので、休み=働いてはいけないというストレスも軽減できる、画期的な新制度だ。
さらに上をいくのがオンラインゲームの開発・販売を手掛けるシグナルトーク基本は週休2日でフルタイムだが、在宅または週2日〜4日の勤務が選べる「Remote」、週休3日または4日の「Freedays」という制度を選択することが可能。収入は、休日の割合によってフルタイムの60%〜80%となる。


<人材活用型>

人材が不足しているのはITや建築分野、介護、飲食業だけではない。財務省が10月25日に全国1366社を対象に実施した調査結果によると、人手不足を感じていると答えた企業は全体の63.2%に上るなど深刻化している。
そこで期待されるのが女性やシニアの活用だ。大和ハウス工業では65歳も勤務可能な「アクティブ・エイジング制度」を導入。嘱託社員で月20万円の収入と待遇は格段に下がるものの、週4日勤務で現役時代よりもゆとりを持って、年齢の制約なく勤務し続けることができる。


どのタイプにもメリット、デメリットがあるが、少なくとも人々が期待するような、労働時間の減少・収入の維持は難しいようだ。これに引き換え、ヤフーの場合はこの点で、「期待に沿う」制度になっているように見える。


労働時間を増やさずに、AIの活用などで時間当たりにできる仕事を増やし、給与や業績は落とさない。労働生産性を高めつつ働きやすい環境をつくるという新しいチャレンジは、働き方改革の新たな可能性を示してくれるだろう。


記事制作/宮本 雪


ビジネスノマドジャーナル編集部
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