思い込みを排除し、データに基づいて"仕組み"を作る。 すると、会社は変わる。 コンサルタント 正金一将氏(後編)

ノマドのキャリア
2016年12月22日

多くの企業で業績アップに貢献してきた正金氏は、大手寿司企業を退社後、別の企業に転職するのではなく、コンサルタントとして独立する道を選びました。そこに込められた想いとこれからの展望を最後に伺いました。


若い企業を見ていると、もったいない会社が多い。
持っているポテンシャルを引きだす仕組み作りが必要だ。

Q:大手回転寿司企業、大手外資系飲料企業、大手弁当企業、大手寿司企業と多くの企業で業績の回復、企業体質に変革に取り組まれてきて、今回、独立されたのですが、その理由をお聞かせください。

正金 一将氏(以下、正金)

何社か、来て欲しいという声がかかっていたことは事実です。ただ、その多くはファンドからの話でした。ファンドが出資している会社のテコ入れをしてほしいという話なんです。そうなると、実情をご存知ない方からの依頼だったり、「短期間で結果を出してくれ」という話が多い。
私は、過去に半年で業績を回復させるなど、結果として短期間で成果を上げたことはあります。でも、前回もお話ししたとおり、「問題の真因」からの解決手法として仕組みから考えているんです。目の前の数字を追い掛けることは本質ではないし、短期的に数字が挙がっても継続しなければ意味が無いんです。目先のことはさておいても、きちんと仕組みを考えて中長期に取り組んでいかないといけない。それが私のやり方なんです。


ファンドからも「2~3年の期間で結果を」という話はありますが、実際には、最初の3カ月で目に見える数字が出ていないと、必ず文句が出る。そんなことで会社を変えられるわけがない。最低でも一年は黙ってみていて欲しい。過去、私が在籍した会社では、どこでも最初の3カ月くらいは「正金は使いものにならない」と言われていました。おそらく、他の人とはやることが違いすぎて理解出来ないのかもしれません。ところが1年ほど経つと、評価がコロッと変わるんです。


Q:これからは一つの企業で働くのではなく、多くの企業と接することになります。

正金

はっきりいえば、もったいない企業が多いんです。ちゃんとしたやり方でやっていけば、利益も上がるし、時代の変化にもキャッチアップしていけるのに、ただ仕組みができていないだけで成績が悪いという企業が多い。若い会社で年商が10億~100億くらいの企業だったら、まだまだ変化しやすいし、ポテンシャルは大きい。これから多店舗展開していきたいというところなら、ぜひお手伝いさせていただきたいですね。


購買戦略を考え、サプライチェーンマネジメントを行う。
そして人材戦略を考えることは、成長に欠かせない。

Q:外食、中食産業で成長途上の会社に魅力を感じるということですね。

正金

そういった企業規模だと、まだ購買戦略が無い場合が多い(大手でも甘い企業が多いですが)。そこでSCM(サプライチェーンマネジメント)の仕組みを作りあげていくと、高収益体質の強い企業になります。


特に飲食店ですと、味に自信があって起業されている。それが多店舗展開していこうとすると、味の維持、広告宣伝なんかには力を入れていきます。でも購買はそのまま、物流はそのままという場合が多い。実際には、多店舗展開する場合に一番気を遣わなければならないのが仕入れと物流なんです。それまでとは違うやり方を早期に導入しないと無理が出る。例えば、一店舗で8万円だったロスは10店舗で80万円にふくれ上がってしまう。こういった課題は、目に見えて問題化する前に手を打っておく方がいい。


Q:飲食ですと、人材にも問題を抱えている企業が多いですね。

正金

もともと飲食業界は、労働時間が長い傾向があるなど、いわゆるブラックな業界という印象があります。悪いのは、その長い労働時間に耐えて生きのこった人が昇進していって、人の上に立つようになっている。実際のマネジメント能力がないままに昇進していくんです。なぜそういう能力がないかというと、店と家しか知らない。労働時間が長いので仕方がないんですね。社会のことはおろか、業界のことさえ知らない。それでいいとされていたんです。長時間労働に耐えて、それが評価されていた。


予算が限られているから工夫する。
労働力も無限ではないのに、なぜ工夫をしないのか?

Q:たしかにそのままの"仕組み"では人は育たないと思えます。

正金

私は、どの会社にいたときにも、いかに部下の労働時間を減らすかを考えていました。その上で、成果を出す。
大手回転寿司企業での名古屋時代、他のエリアに比べて営業成績は破格に高かったのですが、労働時間は短かった。他のエリアが週一日休むのが精いっぱいというところで、私の部下は月間九日は確実に休めている。さすがに、1日八時間では足りなくて残業はしてもらっていましたが、残業するにも私の許可が要る。かならず、制限をかけていました。


Q:納得のうえで残業をするなら、構わないとも言えるのではないでしょうか。なぜ、わざわざ制限するのでしょう?

正金

制限しないと工夫しないからです。例えば、事業をする場合には予算があります。予算には限りがあるので、誰しも経費削減や効率化の工夫をします。個人の家でも収納には限界があるので、ものを捨てたり、場合によってはトランクルームを使うような工夫をするでしょう。


予算には制限がある。収納スペースにも制限がある。ではなぜ、"労働力にも制限がある"と考えないのか。制限はあるんです。雇用している人数、これは予算化された人件費で決まります。その人数×労働時間が「労働力」です。無尽蔵にあるわけではない。


Q:ただ、残業しないように!と声をかけても、なかなか人の意識は変わりにくいと思いますが。

正金

だから、仕組みを変えるんです。この場合は、評価制度に組み込んでしまう。いまは、残業をした方が「よく頑張って働いた」といってもらえる。頑張って休日出勤すると褒められる。これでは駄目です。残業しなくても仕事をきちんと終わらせる工夫を評価する。例えば上司だと「自分が出勤しないと駄目だ」と思いこんでいる人がいますが、「自分がいなくてもきちんと店が回る仕組み」を作ってもらう。そしてそれを評価するようにするんです。


視点を変え、成果が見えるようにし、
仕組みを作っていけば、組織は必ず変わっていく。

Q:正金さんのお話を聞いていると、そういった"仕組み作り"で会社を変えてきた実績の重みを感じます。ただ、部下を育てることにも力を入れておられたのですね。

正金

マネジメントのやり方は組織によって変わりますから、一言では言いにくい。大手回転寿司企業時代は「正金さんは怒っているか、冗談を言っているかどちらかだ」、大手外資系飲料企業では「正金さんは怒らない」と言われていました。組織が違うから当たり前なんです。


大手外資系飲料企業は、「営業が花形」という企業でしたから私が立ち上げた新設の「物流部」への転属は「営業失格、島流し」と最初は皆がイメージを持っていました。皆自信喪失しているわけです。そこで「これができてない」「ここが駄目だ」と怒っても意味が無い。もっと自信をなくすだけです。そうではなくて、仕事にプライドを持ってもらう。


一例ですが、売上を20億上げるのは大変です。でも物流センターで頑張って1000万円のコストカットを成功させたらどうでしょう? 普通、コストカットしようというとネガティブなイメージがあるので嫌がられます。私は、業務を効率化、仕組みの再構築をした結果のコスト削減を追求していました。「20億の売上でも、利益は1000万円だよね。つまり、1000万円のコストカットは20億の売りあげと同じ価値がある、企業の目的は利益を上げることでしょ。売上は利益の手段にすぎないから」と説明すると目の色が変わります。
こういう気付きを促す。これは前に話した、大手回転寿司会社での業務の分解も同じです。自分で気付いて納得してもらう。すると、人は自分から動くんです。


自分の業務を効率化して、残業を減らしたらどれだけの効果があるのか、それを数値化して見えるようにした。また自分のノウハウはみんな隠したがりますが、これをオープンにした。そして、自分のアイデアを人が使って業績を挙げたら、自分にも評価が付くような仕組みにした。そうするとみんな自分のノウハウを出したがります。見えるようにする、評価する、こういう仕組み作りで組織は変わっていくんです。


Q:そういった取組を徹底しているからこそ、正金さんが関わった企業では、業績が向上するのですね。

正金

実は、大手外資系飲料企業での部下が、今では出世して4人も部長になっているという話も耳にします。その会社は統廃合が進んだので、ポストが減るのですが物流部隊は逆に出生している。かつて教えた部下が活躍していると聞くのは、その企業の業績が良いという話よりもうれしいですね。
しかもその部下がいまでも現場に足を運んでいると聞くと、今でも私が教えたことを守ってくれているんだと感慨深い。一人でできることは限られていますが、こうやって教えた人が頑張ってくれるとやってきたことに意味があると思えます。


―徹底した現場主義とデータ主義、そして「視点を変えることの大切さ」。これにこだわってきたからこそ、正金氏は業種が違えども、求められる仕事の内容に差があっても、常に成果を出しつづけてくることができたのでしょう。そして、正金氏の教えを受けた人たちがそれぞれの企業で活躍していることは、正金氏にとっても、その企業にとっても大きな価値になっていると言えるでしょう。


取材・記事作成/里田 実彦
撮影/宮本 雪


専門家:里田 実彦
関西学院大学社会学部卒業後、株式会社リクルートへ入社。
その後、ゲーム開発会社を経て、広告制作プロダクションライター/ディレクターに。
独立後、有限会社std代表として、印刷メディア、ウェブメディアを問わず、
数多くのコンテンツ制作、企画に参加。
これまでに経営者やビジネスマン、アスリート、アーティストなど、延べ千人以上への取材実績を持つ。

ビジネスノマドジャーナル編集部
専門家と1時間相談できるサービスX-bookを介して、企業の課題を手軽に解決します。業界リサーチから経営相談、新規事業のブレストまで幅広い形の事例を情報発信していきます。
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