【ノマド:人事】「ノマド人事部が語る成長する組織・人事」第10回:本当のところ、リモートワークってイケてるのか?

知見・スキル
2016年05月16日


独立ワーカーやノマドワーカーが実践している場所に縛られない働き方、企業においても在宅勤務の導入が増えてきています。今回は、脚光を浴びている「オフィス」と「働き方」の関係です。

従業員が一堂に集まって働く「オフィス」って本当に必要なのでしょうか?「オフィスで働かなければいけない理由」を考えたことがありますか?今回は、最近注目の、オフィス以外で働く働き方、「リモートワーク」について解説します。


「場所に縛られず働く」注目されているリモートワーク

「リモートワーク」「テレワーク」「モバイルワーク」、片や「在宅勤務」など(呼称はさまざまですが)、会社のオフィス以外のどこでも働けるワークスタイルが近頃大いに注目されています。「テレワーク」という単語は、以前から比較的よく使われていたワードです。これは、広義で「職場など一定の場所に縛られずにどこでも仕事ができる」ことを指します。「在宅勤務」というと、働く場所が"自宅限定"的なニュアンスにありますが、「リモートワーク」・「モバイルワーク」などですと、カフェなど場所はどこでもOKというニュアンスとなりますね。私自身も実践している、自営業者などの「ノマドワーキング」もこの範疇に入りますね。


大企業でも導入事例が増加。リモートワークが職場でどれだけ許容されるか

ITベンチャー企業を中心にリモートワーク導入の動きはあり、また一方で、大企業でも、対象者や適用範囲(週1回限定など)を限定した上での導入はここ数年では広がってきた感があります。さらに近頃では、リクルート社のような大企業でも全面的にリモートワークを導入している企業も出てきています。

ノマド―ワーカーがどのような働き方をしようが、ある意味個人の勝手なのですが、一般的な勤め人(「サラリーマン」というと男性限定のような意味あいになるので使いませんが、女性を含めた給与所得者を指しています。)にとって、リモートワークが職場でどれだけ許容されるかは関心の高いことではないでしょうか。

「いや、会社というものは定時に全員オフィスに揃っているべきだ!!」という意見もあるでしょう。旧来型の日本企業では、未だ現状はそのような考え方の方が主流のようです。そのような考え方を一概に否定するつもりはありませんが、実のところ、リモートワークの導入にはどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。以下、つらつらと(会社と従業員のメリットが混ざっていますが、あえて区別せずに)列記してみます。


リモートワークの導入のメリット、デメリット

■従業員にとってのメリット

  • 育児、介護など制約のある人でも働きやすい
  • 居住地域に関わらず(例えば「東京在住」でなくても)働ける
  • 集中して働き、生産性向上
    オフィスの雑音がない。電話を取ったり、上司や同僚に呼び止められたりすることがない。余分な会議に参加しなくて良い。結果、集中して仕事ができる。創造性を発揮しやすい。
  • 通勤のストレス、時間の消耗が無い

■会社にとってのメリット

  • 上記の結果としての従業員満足の向上、結果として離職防止、離職率低下
  • 居住地域の制約条件を外すことにより、優秀人材を拾える(採用の母集団が広がる)
  • 通勤費削減
  • 座席数削減によるオフィスコスト削減

■(従業員と会社双方の)デメリット

  • (言語、非言語の)コミュニケーション量が減ることによる生産性の低下
  • 具体的には、コミュニケーションロスによる業務の手戻り、重複等の発生や、納期管理、進捗管理の難易度が上がる(意識的なチェック、確認が必要)等
  • 新人・若手・部下育成への悪影響
    「見て覚える」「まねて覚える」OJT学習機会の減少
  • 上司や同僚の目が十分に目が届かないために発生する「サボり」の懸念
  • 評価の問題
    「成果で評価」をするとしても、何をもって「成果」を判定・判断するかが明確でないと、「頑張った感」が目に見えにくいリモートワーク勤務者が評価で不利になりがちではないかと不安を感じ、従業員のモチベ―ションが下がる恐れがあります。
  • リモートワークのためのルール作りが大変
    実は事務局、担当者にとってはこれが一番大変。一度決めた労働条件を変えるのは、「不利益変更」の問題もあり容易ではない。また、人事的には、情報セキュリティ対策、労災適用範囲のルール決め、通信費や設備、通勤費等の費用負担ルール作り、様々なケースを想定した勤怠の扱い等のルール決めが必要になる。
  • オフィスへの求心力低下
    リモートワークが定着すればするほど、「わざわざオフィスに行く価値があるの?」と、従業員は感じるようになるでしょう。あえて「オフィスで働く」ことの意義、意味を積極的に見出し、従業員に積極的に活用してもらうための「仕掛け」がオフィスに必要になる。

リモートワークの導入は、これらのメリットとデメリットを十分に考慮した上で、各社の判断となります。


ベンチャー企業が先行してリモートワークを取り入れている理由

なお、IT系のベンチャー企業が先行して積極的にリモートワークを取り入れている理由はいくつかあります。

まずは、特にエンジニアにとってはリモートワークは相性の良い働き方であることです。例えば、プログラムを書くコーディング作業は、ノートPCさえあればいつでもどこでも実施可能です。他人とコミュニケーションをせずに集中して取り組む時間が業務時間の中でそれなりの割合を占めるのであれば、わざわざ時間を掛けて会社に通勤して騒がしいオフィスで仕事をするよりも、自分にとって能率的に集中が出来る環境(自宅やカフェなど)で仕事をしたほうが生産性が上がりませんか、ということですね。


そして、近年著しい、リモートワークを実現するためのIT系ツールの進歩(SkypeやWeb会議システム、Dropbox、Box等のファイル共有サービス、Slackなどのチャットツールなど)に対していち早く対応し、活用できたのは、ITリテラシーが高いこのような会社だったということでしょう。

さらには、大企業よりベンチャーの方が、足を引っ張る制約が少ないという点も考えられます。前例のないことはとりあえず妨害という社風や上司・同僚に邪魔されるという大企業的な制約はベンチャーでは(一般的に)あまりありませんので、過去の常識や慣習にとらわれず、良さそうなものをいち早く取り入れることが容易です。


大企業で進む意識改革。「ワークスタイル変革」の取組の広がり

とはいえ、最近の傾向では、まだ一部の企業に留まるものの、大企業でも在宅勤務の取り組みを始めるところが増えはじめており、「ワークスタイル変革」「働き方変革」といったフレーズもよく聞かれるようになってきました。「ダイバーシティ」「LGBT」という概念が一般的になってきた中で、より高い成果を挙げるための手段として、画一的でない多様なスタイル・働き方を容認することが必要になってきたという認識が、(日本の)大企業の中でも常識となり始めているのかもしれません。

すでにリモートワークを本格導入している、ある著名な大企業の方からは、「リモートワークのない時代に戻るなんてもう考えられない!」という感想もお伺いしています。おそらくあと数年後には、リモートワークを取り入れない会社の方が少数派になっているかもしれませんね。


専門家:新井 規夫(組織人事ストラテジスト)
新卒入社の大手ホテル業で給与・労務等人事の基礎を学び、急成長ベンチャー2社で管理部門全般(財務/経理/人事/総務)を担当。そこで感じた問題意識から慶應MBAに進む。在学中にCanadaのTop MBA, Richard Iveyに交換留学。2006年に楽天に入社し、人事評価・報酬制度の全面刷新(人材戦略室長)、買収した赤字通信子会社のPMI/事業再生(経営管理/人事部長)、二子玉川への本社移転PJ立ち上げ、CSR推進、Asia地域の人事統括(Singapore駐在)等を歴任。「ベンチャー・成長企業」「組織・人事・経営管理」をキーワードに、「成長の痛み」を未然に防ぎ、企業の健全な成長を加速させることを使命とし、2014年より独立し、複数企業の人事アドバイザリーとして活動中。

ビジネスノマドジャーナル編集部
専門家と1時間相談できるサービスX-bookを介して、企業の課題を手軽に解決します。業界リサーチから経営相談、新規事業のブレストまで幅広い形の事例を情報発信していきます。
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