「これだ!」と掴んだら離さない握力はだれよりも強い 女性起業家 金澤悦子氏【後編】

経営者インタビュー
2015年12月22日

起業の数だけ人生がある。様々な出会いやタイミングが重なった先に十人十色の経営者がいる。

学生時代のビジネス経験、TOP営業としての輝かしい新卒時代、創業期IPO前のベンチャーで経験した思いがけない挫折、転機。一瞬一瞬の流れの中で手放したもの、手放さずに握り続けたもの。

今回の経営者インタビューは株式会社はぴきゃり代表取締役 金澤悦子さんにお話をお聞きしました。

(前半の記事はこちら



「女性は今よりもっと幸せに働ける」女性の働き方を変える使命感

Q:体調を崩されて立ち止まった時、何を考えましたか?

金澤 悦子さん(以下、金澤):

会社を辞めようかとも思いましたが、結局キャリアデザインセンターに復帰しました。多田さんが「好きなことをやってみろ」と言ってくださったのです。好きなことって言われてもなぁと思いながら、ぼんやりテレビを見たり、久しぶりに友達と会って話をするうちに、仕事は好きだけどオーバーワークで苦しんでいたり、自分らしい仕事ができていなかったり、少し前の私と同じような悩みを抱えながら働いている女友達が多いことに気がつきました。

「女性は今よりもっと幸せに働けるのではないか」強い気持ちが生まれました。その答えがどこにあるのか確かめたかったし、そんな現状を本気で変えたかった。使命感にも似た想いでしたね。

「多田さん、やりたいことが見つかりました」そう言って2001年に創刊したのが、日本初の女性総合職のためのキャリア転職マガジン「ワーキングウーマンタイプ(現ウーマンタイプ)」です。女共同参画社会基本法やポジティブ・アクションなど、ちょうど世の中の流れも味方しました。そこから編集長として第二の仕事がスタートしました。

Q:その時、お仕事を通じて5000人以上の女性にインタビューをされたのですね。

金澤:

そうです。月100名はお会いしていました。

「どうしたら働く女性がより幸せになれるのか」インタビューを通じて自分なりに見つけた答えは「こころとお財布、両方のバランスが満たされている」こと。

もちろん、こころとお財布のバランスは人それぞれ。大事なことは、自分が自分自身のバランスを理解していること、そのために自分の素質をきちんと知っておくこと。

そのことに気づいてもらうために、4つのステップからなる仕組みがつくれるというアイディアもありました。その頃、会社は無事IPOを果たし、立ち上げたメディアは創刊から3年を迎えていました。自分は35歳。色々区切りの良いタイミングだと感じました。何より、5年後40歳になったときにそのまま組織で働いている自分をイメージできなかった。組織で働くよりも、もっと多くの働く女性が輝くために自分にしかできない仕事がある。やっぱり自分で何かをしなければならない。これはもう今、起業するしかないと確信しました。



世の中の働く女性のために。何をやるか決める前に起業

Q:35歳。起業する時、怖いと思いませんでしたか。

金澤:

まったく怖いと思いませんでした。キャリアデザインセンター時代から一緒に働いていたつっちーも、会社を辞めて一緒にスタートを切ってくれたことが何より大きな支えでした(現:株式会社はぴきゃり取締役 土屋美樹さん)。彼女とは昔から目指すものが一致していたんです。「私たちのように働く女性のために何かしたいよね」そう話しているだけで楽しかった。だからサービスをどうするとか、どんな事業をやろうとか、きちっと決める前に二人でぱっと会社を辞めました。世の中の働く女性にとって必要なことを始めるのだから、やればなんとかなるだろう。信じていたことも大きいですね

Q:起業した後、困難な時期はありましたか。

金澤:

ありました。設立4年目、リーマンショックの時はもちろん大変でした。そして東日本大震災のときは3ヶ月仕事がありませんでした。

でも、そんな時こそ知識を蓄える時期。WEBマーケティングのセミナーに出かけたりしていましたね。状況が良くても悪くても何かしら得るものは得る。マイナスの時間をつくらない。不思議なもので、そんな時期に知り合った方ほど深い繋がりに発展しています。

例えば、今まさに事業の力になってくれている「売れる仕組みつくりの専門家」である黒ちゃん。彼とは、その時期に受けたセミナーで知り合いました(ユアーブリッジ・コンサルティング代表 黒澤森仁氏)。外部人材として頼れる黒ちゃんのサポートを受け始めたのが設立6年目。彼がうちのマーケティングやサービスモデルをしっかりと体系化してくれたおかげで、やっと安定したビジネスのかたちができました。大変な時は、仕事がなくて時間だけがあるのでふらふらする。ふらふらしていると、そういう時ほど良いアイディアや素晴らしい出会いにめぐり会う。不思議なものですね。

Q:ところで経営に関する数字面はどうやって学んだのですか。

金澤:

全然ダメ。私、そっち方面が弱いんです。数字周りはつっちーが得意なので信頼してお任せしています。有難くもそこは分担ですね。

Q:いつも周りに心強い応援団がいらっしゃいますね。

金澤:

本当にその通りです。新卒の就活の時も、前職で倒れた時も、起業する時も、不景気の時も、ピンチのときには誰かが必ずすっと支えてくださる。周りの存在は本当に大きいですね。感謝してもし切れません。そして私は「これだ!」「このひとだ!」と思ったら何がなんでもぎゅっと掴んで離さない握力が人より強いのかもしれません(笑)。



「すきなことのために働く」という価値観が一致。会社設立直後の結婚

Q:お話は変わりますが、キャリアの中で結婚は意識されていたのですか。

金澤:

全然!まったく意識していませんでした。仕事が大好きでしたから(笑)。まさかあのタイミングで結婚するなんて思ってもいませんでした。結婚した彼とはお互い共通の仲間が多かったのですが、彼らが外堀を埋めるようにじわじわと私達をくっつけました(笑)。決め手?そうですね。お互いすきなことのために働くという価値観が一致していたところでしょうか。

当時、会社を辞めて起業すると言ったら「いいね!やりなよ」と応援してくれたんです。心配されたり止められるかと思っていたので予想外の反応でした。でも応援してくれたのは嬉しかったですね。それで「あ、この人だったら結婚してもいいかも」と思いました。ただし会社設立の直後の結婚だったので登記を新しい苗字に変更しなければならず余計な出費がプラスオン。勿体無い。それくらい結婚は想定外でした(笑)。



働く女性が幸せになる可能性を広げていくことが私のミッション

Q:最後に。仕事を楽しむ女性が増えると日本はどうなると思いますか。

金澤:

仕事を楽しむ女性が増えると彼女たちの子供がまた楽しくなりますね。「働くママ、カッコいい!」って。子供はイキイキ働くママを見てそこから色々な刺激を受けると思います。だから女性がイキイキと働くことは、次の世代に良い循環をパスすることにも繋がるのではないでしょうか。

うちの子供と触れ合っていてもそう感じます。そして、働くことを楽しむ女性は皆さん輝いていますね。はぴきゃりアカデミー修了生である柏葉綾子さんのように「海外で働く女性も輝かせたい」と言って、現在ドイツではぴきゃりヨーロッパを主催するメンバーが出てきたことも嬉しいです。もっともっと多くの働く女性が幸せになる可能性を広げていくことが私のミッションであり経営の軸だと思っています。



取材・記事作成/伊藤 梓
撮影/加藤 静

【専門家】金澤悦子氏
株式会社はぴきゃり 代表取締役/ はぴきゃりアカデミー 代表/ i-colorエグゼクティブトレーナー
1991年、 株式会社リクルート(現株式会社リクルートホールディングス)に入社。営業に従事し、新人MVP賞を受賞。1994年、株式会社キャリアデザインセンターに創業メンバーとして参画。広告営業で同社初、売り上げ1億円を達成。広告営業局局次長、広報室室長を歴任するも、仕事との距離感がつかめずに心と体を痛めてしまう。この体験をきっかけに、「幸せに働くってどういうこと?」という問いへの答えを求め、2001年、日本初の総合職女性のためのキャリア転職マガジン 「ワーキングウーマンタイプ(現ウーマンタイプ)」を創刊、編集長に就任。編集長時代、5000人以上の女性を取材。ハッピーキャリアを見つけるための4つのステップを体系化する2005年に独立し、有限会社フォーウーマン(現株式会社はぴきゃり)を設立。11年、女性限定キャリアの学校『はぴきゃりアカデミー』を開講。統計心理学i-colorを使ったオリジナルメソッドにより、年間300人以上の女性たちを「ココロとサイフが満たされる仕事発見」へと導いている。 40歳で第一子を出産。休みの日は趣味のサンバを楽しむ。2015年12月8日新刊『働くママの仕事術』(かんき出版)を上梓。

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