【ビジネスモデル】豆腐市場で急成長する相模屋食料のビジネスモデル~社長のリーダーシップ~

知見・スキル
2015年09月09日

(国籍/業種)日本/大豆加工食品の製造販売
(キーワード)リーダーシップ、イノベーション、ターゲティング、模倣困難性

現状に甘んじることなく、絶え間ない挑戦を続ける社長のリーダーシップにより、飽和状態にある市場においても躍進を続けている企業を紹介します。

「ザクとうふ」、皆様も目にしたことがあるかもしれません。従来の豆腐のイメージを覆す製品を発売して話題を集めている企業があります。群馬県前橋市を本社とする相模屋食料です。大豆加工食品(豆腐・油あげ・厚揚げ等)製造および販売を事業とし、1951年10月設立の企業です。

豆腐の製品特性として、差別化することが難しいことや価格競争と材料原価の高騰により儲かり難いこと、製造方法は伝統技術に拠るところがあり、完全に機械化することが困難なため、大量生産に向かないことがあります。

業界で初めて売上高100億円超を記録。驚異的な売り上げ拡大

国内は人口減少と高齢化により、食品に対する需要の絶対量が減少しています。経済産業省「工業統計調査・産業編」によれば、豆腐・油揚製造業における2013年の3人以下の事業所数は、2,291であり、4人以上の1,329です。実に6割以上が3人以下の事業所であり、家族経営のレベルとなります。

相模屋食料は、急成長している豆腐メーカーです。2004年に約30億円であった売り上げが、2014年には約180億円までに拡大しています。業界で初めて売上高100億円超を記録し、業界トップの企業です。既述した状況を鑑みると、同社の事業規模の拡大は、驚異的であることがわかります。

企業の成長には、イノベーションが必要です。イノベーションには持続的イノベーションと破壊的イノベーションがあります。既存製品の改良やアップグレードをすることを持続的イノベーションといいます。これに対して、既成概念を覆す製品を生み出すことを破壊的イノベーションといいます。業界で最大シェアを獲得している企業では、既存製品で十分な市場規模を有しているため、従来の製品の改良ばかりし、新製品の開発を軽視する「イノベーションのジレンマ」に陥ることがあります。イノベーションのジレンマにより、新興企業の革新的な製品で市場を奪われることがあります。

業界でトップ企業であり、大きな市場規模を獲得しているにも拘わらず、相模屋食料は社長の強力なリーダーシップのもとで、既成概念を覆す製品を生みして、同社は飛躍的な成長を遂げています。

常識にとらわれない発想「ザクとうふ」

相模屋食料は、アニメ「機動戦士ガンダム」に登場するモビルスーツをかたどった豆腐を発売して話題を集めています。

「機動戦士ガンダム」、ご存じの方も多いと思いますが、1980年代に一世風靡したアニメです。宇宙のスペースコロニーに移住した人類が地球に対して起こした独立戦争を描いた作品で、同アニメは、現在に至るまで、多くの続編や派生作品が制作されています。今でも、30代〜40代の男性を中心に、多くの熱烈なファンが存在します。なお、モビルスーツとは、同アニメの作中で登場する人型ロボット兵器のことです。

相模屋食料が当初発売したモビルスーツをかたどった豆腐は、2012年に発売した「ザクとうふ」です。ザクとはガンダムに登場する量産化されたモビルスーツです。大量生産された「ザクとうふ」が店頭に並んだ光景に、ガンダムファンの男性は思わず息をのんだことでしょう。「ザクとうふ」から2015年8月に発売となった「トリプル・ドムとうふ」に至るまで、4種類のガンダムシリーズの豆腐を発売し、累計で500万個近くを売り上げています。かたちのみならず味も斬新であり、「ザクとうふ」はビールのつまみに最適な枝豆風味で、「トリプル・ドムとうふ」はチョコレート味です。

おおよそ、豆腐にそれ程関心が薄いと思われる30代〜40代のガンダムファンをターゲットにした製品です。従来の豆腐市場では、地域にも老若男女にも関係なく、市場を均一と見なした無差別マーケティングが主流だったといえますが、ガンダムシリーズの豆腐では、特定のセグメントに対してのマーケティングと捉えることができます。特定のターゲットに絞り込むことが、製品の売り上げに貢献することの好例といえます。同社の社長は、熱烈なガンダムファンのひとりであり、自社製品と機動戦士ガンダムのコラボレーションによる製品を実現させたい強い思いが成功に導いたのです。情熱、信念や決断力がリーダーシップの源泉となり得るのです。

かつて、「いちご大福」が発売となったときに、イチゴと大福の組み合わせの意外性に多くの人が驚きましたが、ミスマッチとも思える「いちご大福」は人気商品となりました。ガンダムと豆腐のように意外な組み合わせが、ヒット商品を生み出すことがあるのです。

同社の既成概念を覆す製品は、ガンダムシリーズに限るものではありません。F1層(20歳から34歳までの女性)をターゲットにした「マスカルポーネのようなナチュラルとうふ」は、スイーツを連想させるパッケージで、サラダの食材としても最適であり、女性の間で大人気となっています。東京ガールズコレクションでも紹介されるなど、従来の豆腐の概念を打ち破る製品です。これもターゲットを絞り込むことによる成功事例といえます。

出典: http://sagamiya-kk.co.jp

独自ノウハウによる生産設備を導入。事業の柱は伝統的な豆腐

常識破りといえる製品に話題が集まる同社ですが、事業のメインとしているのは、伝統的な豆腐である木綿豆腐や絹豆腐です。

同社には、1日あたり120万丁の豆腐生産を可能とする第三工場があります。同工場では、独自ノウハウによる、温度を下げなくともパック詰めを可能とする生産設備を導入しています。この生産設備の導入により、雑菌の混入を防ぎ、豆腐の賞味期限を伸ばすことに成功しています。従来では、手作業でパック詰めを行うために、完成した豆腐を水にさらして、冷ましてからパック詰めをしていました。水にさらす工程は、雑菌が混入するリスクを高くし、豆腐の風味を落とすマイナスの側面があります。

賞味期限を伸ばすことで、豆腐メーカーや小売店においては廃棄ロスのリスクを軽減し、消費者にとっては余裕を持って購入ができるメリットがあります。このような取り組みは、持続的イノベーションといえます。また、独自のノウハウによる生産設備の導入は、競合他社にとっては模倣困難性が高く、同社の業界での地位をより強固なものとする効果が期待できます。

同社の既成概念を覆す製品に、「木綿3個パック」があります。豆腐業界では、木綿豆腐3個をパックにした製品を開発することは不可能といわれていました。木綿豆腐は絹豆腐より工程が多く、全工程の機械化が難しく、手作業で3個入りパックを生産するには、手間がかかり過ぎるからです。ところが、同社では全工程を自動化する生産設備を導入しており、木綿豆腐3個入りパックの製品化にも成功したのです。木綿豆腐3個入りパックの製品化を可能とする競合他社は存在せず、同社の市場拡大に大きく貢献する製品となり得たのです。

ビジネスに対する姿勢。強いブランド力と社員からのロイヤリティ

同社では、競合会社が激安で価格競争に挑んで来たときに品質を下げてまで安売りをせず、また、原料となる大豆が高騰したときも価格に転嫁することなく、安定した品質と価格を維持してきました。企業トップのリーダーシップによるこのような取り組みは、市場から高い信頼を獲得することになり、同社製品の強いブランド力につながっています。

また、同社を経営の危機から救った社員の名前を冠した豆腐を製品化しています。こうした社員の功績に報いる企業のトップの姿勢は、社員からの厚い信頼を得ることになり、企業への忠誠心を醸成することになります。


<参考文献・参考サイト>

専門家:中野真志
明治大学卒業。中小企業診断士、社会保険労務士、宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。
東京都中小企業診断士協会 城北支部所属、ビジネスイノベーションハブ株式会社 取締役、シュー・ツリー・コンサルティング パートナー、イー・マネージ・コンサルティング協同組合 組合員、日本マーケティング学会会員、人を大切にする経営学会会員。
活動分野はIT、ビジネスモデル、デザイン思考、地域活性化。
大手システム会社を6年間勤務した後、独立してフリーランスで活動、数多くのプロジェクトに参画。ITを有効活用した中小企業の経営革新を実現するために、ビジネスモデルの研究やコンサルタント、執筆、セミナー企画、セミナー講師などの活動を行う。地域誘客プロジェクト立ち上げや商店街支援など、地域に根ざした活動もしている。 主な執筆、小さな会社を「企業化」する戦略(共著)、新事業で経営を変える!(共著)、「地方創生」でまちは活性化する(共著)、地方創生とエネルギーミックス(共著)。

ビジネスノマドジャーナル編集部
専門家と1時間相談できるサービスX-bookを介して、企業の課題を手軽に解決します。業界リサーチから経営相談、新規事業のブレストまで幅広い形の事例を情報発信していきます。
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