【ノマド】「働き方」は本当に変わってきたのか?

コラム
2015年07月06日

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独立プロフェッショナルの「働き方」のトレンドや業界情報について調査・情報共有する「ビジネスノマド業界情報コラム」。
「3社転職の時代から、3社で同時に働く時代へ」のコンセプトのもと、近年注目されている「働き方」の変化について、実際のところ本当に変わっているのか、その実態や背景に迫るコラムです。本コラムを通して、知られざる「ビジネスノマド」について理解し、新しい働き方について考えるきっかけとなるような情報発信をします。今回は、近年の働き方の変化について、労働力調査等を基に、改めて基本的な背景について整理しておきたいと思います。


働き方ブームはおきているが・・・

はじめに

2012年に「ワーク・シフト」が出版され、その前後でノマド、コ・ワーキングスペースなどワークスタイルがもてはやされました。一種の「働き方ブーム」が起きた、といえます。

ノマド的なワークスタイルに対する賛否、社畜として働くことを揶揄した論争などもネット論壇などで起きました。また、クラウドソーシングとよばれる働き方も、利用者が増えてきています。

クラウドワークス、リアルワールドの新規上場などは、その象徴的な例だと言えます。


その後、コワーキングスペース、シェアオフィスのような場所も定着してきたように見えますが、ビジネスパーソンの働き方はどのように変化したのでしょうか? これらの変化をどう読み解き、今後の働き方、企業との関係をどう見ていくのか?この変化を読み解く視点として、大きく分けて次の3つの視点があると思います。

  • ビジネスパーソンから見た視点
  • 企業側から見た視点
  • 全体像・マクロ的な視点


産業構造は変化している。製造業→減少、医療・福祉→増加

就業者数が増えた産業・減った産業

まず、最初にどの業界・産業で働く人が増えているのか、日本全体の産業別就業構造の変化を見てみたいと思います。


次の図1は、総務省「労働力調査」をもとに、産業別の就業者数の遷移をグラフ化したものです。図では2030年までの見通しを加えてあります。 産業別の就業者数を長期統計で見ると、農林水産業、製造業・建設業の就業者数が大幅に落ち込んでいます。

この産業構造変化は、実際に図にしてみると大きな落ち込みであることが明らかになります。 一方、特筆すべき点は、医療・福祉分野での就業者が大きく増加していることです。

高齢化社会を迎えている日本において、将来的にも大幅増加の見通しとなっていることは理解しやすいと思います。


graph1


大きな産業のくくりで見ましたが、もう少し細かく産業ごとの就業者数の変化がどうなっているのか見てみましょう。


直近の5年のスパンで見ると、どの産業が近年伸びているのかがよく分かります。 図2は2013年7-9月~2014年7-9月の直近1年間での産業ごとの就業者数の変化(増減数)をグラフ化したものです。(2013年1月より派遣労働者の集計方法が変わったため、統計の連続性を持たせるために1年間の変化で抽出)

このグラフを見ると、「分類不能の産業」の増加数が最も大きいことが分かります。次いで「医療・福祉」、「建設業」、「情報通信業」の増加数が大きくなっています。

ただし、この中の、建設業は長期トレンドに逆行しているようですが、東京オリンピックやアベノミクス公共事業などの影響で建設業の人手不足が話題になったように、一時的な要因で伸びているものだと考えられます。


(図2:産業別就業者数の増減数)

graph2


では、「分類不能の産業」の就業者数増加数が最も大きいということは、何を意味するのでしょうか。

従来の仕組みでは整理できない業種・業種が増えていることを意味しているのだと思います。産業分類も数年毎に改定されていますが、世の中の変化が早く、統計の分類が実態に追いつけていないのです。 つまり、従来の枠組み(業種分類・産業分類)ではとらえきれない「新しい産業」が増えていると考えることができます。


職業のタイプ・類型が多様化。今後は専門性や技術がより重要に

就業者数が増えた職業・減った職業

今年は職業別に、就業者が増えた業種、減った業種を見てみましょう。ここでは、1980年~2014年7-9月の実績値に2020年の見通しに加えて、5年間隔での増減を確認してみましょう。


この長期間(40年間)で増加し続けている職業は「専門的・技術的職業」、「サービス業」です。


「事務・営業職(販売職)」は2000年まで増加し続けていましたが、それ以降は伸びが鈍化しています。 一方、「管理的営業」は減少し続けています。これまでのように、企業の組織階層がフラット化し、不要な管理職ポストを減らしてきた結果、「管理的職業」の数が減少し、一方で専門職・技術職や、サービス職、もしくはそれらで説明できない職業が増えてきたということが言えます。


graph3


職業別統計でも同様に、もう少し細かい職業ごとの増減を見てみましょう。 図4は2009年7-9月~2014年7-9月の直近5年間での職業ごとの就業者数の変化をグラフ化したものです。 このグラフを見ると、最も増加した業種が「専門的・技術的職業」となっています。これは長期トレンドで見た傾向と同じです。 素の次に増加した職種が「分類不能の職業」となっています。産業別と同様に、職業別でも「分類不能の職業」の伸びが高く出てきました。


graph4


「専門的・技術的職業」の増加は、何を意味するのでしょうか。

様々な働き方本、キャリア本などでも指摘されていますが、何らかの専門性や技術を持つことが重要だということが読み取れます。

では「分類不能の職業」の増加は、一体何を意味するのでしょうか。

その名称の通り、従来の仕組み、職業分類では整理できない職業・職種が増えているということなのです。身近な例で考えてみると、「UXデザイナー」、「○○エバンジェリスト」、「○○プロデューサー」などの肩書きを名乗る人を見かけることが多くなったと思いませんか。

しかも、数年前にはあまり存在しなかった肩書を使う人が増えていると思います。

職業のタイプ・類型が、5年前、10年前と比べて格段に多様化しているのに、統計上の分類項目がおいついていないのです。


専門性が多様化していく中で、組織や職種ではなく、自分の専門性をよりどころにした働き方が増加していく

まとめ:新しい産業、新しい職業が増えている

ここまで、どのような産業・業種で働く人が増えているのか、どのような職業で働く人が増えているのか、政府統計データをもとに見てきました。統計から「分類不能」の伸びが大きいことが分かりました。


「分類不能」が増えているということは、言い換えれば「新しい産業」、「新しい職業」が増えているとも言えます。

「働き方」ブームでは、様々な書籍・記事で、新しい働き方を、働く場所、働く時間帯、組織と個人の関係、働く目的について書かれていました。


ですが、少し視点を変えてマクロな視点から統計で変化をみると、新しい産業、新しい職業が増えているということが分かります。 確かに実感値としても、近年、新しい仕事、新しい業界、新しい職業が増えているということを身近に感じることがあります。

例えば、自分の職業や業種をアンケートで答えようとすると、どれに当てはまるか分からない、ぴったり当てはまる項目が無いといったことがありませんか。 今後も更に広がりを持つことが予想されます。なぜなら、産業・業種も垣根が消え、仕事も部門・業務の垣根が消え、積極的外部とコラボレーションをしなければ、変化に対応できない仕事が増えている からです。

イノベーションやワークスタイルの変革など、とかく尖った一部の目立つ人の動きとしてメディアで取り上げられることが数多くあります。しかし、これまでの統計データのトレンドから見ると、


多くのビジネスパーソンにとっても、「新しい産業」、「新しい職業」に向かっていくことが時代にある

のだといえるのではないでしょうか。 企業は内部人材育成によりそれらの専門性を獲得するコストが非常に大きくなる→外部人材を効率的に活用したい。

人材は、それぞれの自身の専門性が求められる→キャリアの中でどのような専門性を身に着けていくのか、が重要に。 このような背景のもと、産業・職業の多様化に伴い、上記のような専門性をもった独立プロフェッショナル「ビジネスノマド」としての働き方を推進する流れができていると思います。  


【専門家】谷口 賢吾
株式会社クリエナレッジ代表取締役。
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方の産業振興政策策定に携わる。
2002年よりビジネス・ブレークスルー執行役員、BBT総合研究所責任者兼チーフ・アナリストを経て2006年に独立。
2008年法人化(現クリエナレッジ)。リサーチ事業、ビジネスプロデュースなどを手がける。

ビジネスノマドジャーナル編集部
専門家と1時間相談できるサービスX-bookを介して、企業の課題を手軽に解決します。業界リサーチから経営相談、新規事業のブレストまで幅広い形の事例を情報発信していきます。
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