【フレームワーク】ビジネスモデルとは何か? ~ビジネスモデルの構造をWhat, Who, How, Whyという4つの視点で捉える~

知見・スキル
2015年07月03日

独立プロフェッショナルや若手経営者、キャリアプラン設計中のビジネスパーソンに送る、「ビジネスノマド・スキルアップ講座」。若手ビジネスパーソンのために、意外と整理していない、ビジネスモデルについての考え方やその事例について、ビジネスノマドが、そのスキルや知見を共有いたします。


「3社転職の時代から、3社で同時に働く時代へ」のコンセプトのもと、ビジネスパーソンの役に立つ知見を共有し、皆様の働き方の幅を広げるサポートをいたします。第一回はビジネスモデル思考を身につけるために、まずはビジネスモデルの一つの考え方とその理解のための便利なツール「ビジネスモデルキャンバス」についてご紹介いたします。


本コンテンツの最初の内容は「ビジネスモデル」についてです。

「ビジネスモデル」というと皆さんは何を思い浮かべますか?

例えばコンサルティング?受託系開発?自社サービス開発?なのでしょうか。この言葉の定義がはっきりとわからない人も多いと思います。そこで「ビジネスモデル」という曖昧な言葉を紐解いていこうと思います。「ビジネスモデル」とは何か、その具体例、そして今後期待されるモデルとは何かについて説明していきます。


ビジネスモデルとは何か?

近年、ビジネスモデルという言葉をよく耳にするようになりました。


大きな書店のビジネスコーナーに行くと、国内外のビジネスモデルに関する書籍が所狭しと並んでいます。ビジネスモデルという言葉は一種のバズワードとなりつつありますが、それが本当に意味するところを理解している方はまだまだ少ないようです。


かのピーター・ドラッカー氏によれば、ビジネスモデルとは「顧客は誰か?顧客にとっての価値は何か?どのようにして適切な価格で価値を提供するのか?」という質問に対する答えだと説明しています。


また、ハーバード・ビジネススクールで教鞭をとっているジョアン・マグレッタ女史によれば、「会社が上手く機能する方法を説明するストーリー」であると定義しています。さらに、後述のビジネスモデルキャンバスを考案したスイスの経営コンサルタントであるアレックス・オスターワルダー氏によれば、「組織が価値を生成、提供、獲得する方法の論理的根拠を説明するもの」と述べています。


端的に言えば、ビジネスモデルとは「ビジネスとしてお金を継続的に稼ぐ仕組み」です。


ビジネスモデルと戦略は異なる

ビジネスモデルと戦略は、異なる次元の概念です。後者は「市場において優位性を維持するために、経営資源を集中させるべき領域に関するトップマネジメントによる意思決定」です。たとえば、我が国の主要な銀行において、戦略は異なることがあるかもしれませんが、ビジネスモデルはほぼ同じです。一方、セブン銀行は異なるビジネスモデルを持っています(従来の銀行業務を分解して、一部の業務に特化するアンバンドリング型ビジネスモデルと呼ばれる)。


また、多くの美容室や理髪店のビジネスモデルは類似していますが、QBハウスのビジネスモデルは相当異なります(余分なサービスをそぎ落としたノーフリル型ビジネスモデルと呼ばれる)。この2社は、戦略というよりもビジネスモデルの違いによって説明される方がはるかに分かりやすいでしょう。


ビジネスモデルイノベーション

多くの企業経営者の間で、ビジネスモデルのイノベーションが大きな関心事となっているようです。


IBMの調査によると、世界的企業のCEOのほぼ全員が現行のビジネスモデルを修正する必要を痛感し、2/3以上が現行のビジネスモデルを大幅に変更する必要を認めています。注1) ここに、多くの経営者がビジネスモデルのイノベーションに関心をもつことを裏付ける調査結果があります。注2) 従来のプロダクト/プロセスイノベーションによる3年間のTSR(Total Shareholder Return、株主総利回り)のプレミアム分が1.7%であるのに対し、ビジネスモデルイノベーションによるものは8.5%と大幅に上回っていることが分かります(図1)。


従来のプロダクトイノベーションが「新しいモノ作り」である一方、ビジネスモデルイノベーションは「新しいコト作り」、つまりビジネスの仕組み作りと言えます。


2000年以降のAppleの復活の原動力となったiPodはプロダクトイノベーション(あるいはデジタル化ウォークマン)かもしれませんが、長期にわたる成長の原動力になったのはiTunesというビジネスモデルイノベーションともいえるプラットフォームです。AmazonのKindle(電子書籍端末)の普及も、豊富な書籍タイトルというロングテール、ワンクリック購買による利便性という仕組みの組み合わせをもつプラットフォームによって成り立っています。


スライド1


ビジネスモデルの4つの柱

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ビジネスモデルは、4つの大きな柱から構成されると私たちは考えます。1つ目は「誰が顧客か?」であり(Who)、2つ目は「何の価値を提供するのか?」です(What)。3つ目は「どのようにその価値を生成/提供するのか?」であり(How)、4つ目は「なぜそれが利益を生み出すのか?」です(Why)。

前述のマグレッタ女史によれば、成功するビジネスモデルとは何かを明確にすることはできないが、少なくとも失敗するビジネスモデルとは「ストーリーテスト」(話の筋道が通っているか?)、「ナンバーテスト」(収支が合っているか?)のどちらにも合格しないものであると述べています。

これは当たり前のように聞こえますが、「森を見て木を見る」ビジネスモデル思考を身に付けなければ陥りやすい罠となるでしょう。


ビジネスモデルキャンバス

新規ビジネスの構想に着手する場合であれ、既存ビジネスのイノベーションを検討する場合であれ、組織内部でビジネスモデルを議論するための共通言語、地上1,000mの空から自社を眺めるようなホリスティックな視点で捉えるためのビッグピクチャーが必要となってきます。そこで今般ご紹介するのが、ビジネスモデルキャンバスです。


ビジネスモデルキャンバスは、ワールドワイドで100万部販売された「ビジネスモデルジェネレーション」注3)という書籍で紹介されているツールで、世界中の多くの組織で幅広く活用されています。ビジネスモデルキャンバスは、業種/業界や企業の大小を問わず、ビジネスを行う上で考慮すべき最も重要な9つのコンポーネントから構成されています。


  • 顧客セグメント - 自社が価値を提供したいと望む異なる個人または組織のグループ
  • 価値提案 - 特定の顧客セグメントに価値を提供するプロダクトまたはバンドルとその特性(究極的には顧客が自社を選択する理由)
  • チャネル - 特定の顧客セグメントに価値を届ける方法とその役割(購買前、購買時、購買後)
  • 顧客との関係 - 特定の顧客セグメントと確立したい関係(顧客獲得、顧客維持、顧客育成)
  • リソース - 価値提案の拠り所として必要とされる重要な経営資源(ヒト、モノ、カネ、チエ)
  • 主要活動 - 価値を生成するために必要とされる重要な活動(付加価値連鎖型、問題解決型、仲介/ネットワーク型など)
  • パートナー - リソースを補完し、自社の活動に参画する外部の協力者と協働する目的
  • 収益の流れ - 価値提案の対価として獲得する金銭的な価値(収益モデル、プライシングメカニズム、支払方法など)
  • コスト構造 - ビジネスモデルを運営する上で負担しなければならない金銭的なコスト(固定費、変動費など)

ビジネスモデルキャンバスを上手く活用すれば、ビジネスモデルのダイナミクスに関する仮説を立てたり、成功しているビジネスモデルの検証をしたりすることもできます。


例えば、サウスウエスト航空に代表されるノーフリル型のビジネスモデルは、ビジネスモデルの各々のコンポーネントが相互に上手く噛み合うことにより、固定費が低下し、それがさらなる格安運賃につながるという循環(サーキュレーション)を生むことが直感的に理解できます(図2)。注4)


スライド2

ビジネスモデルイノベーションをシステマチックに考える

ビジネスモデルのイノベーションは、顧客に新しい価値を与えると同時に継続的な金銭的な価値を獲得するための仕組みを作ることであり、「発明」とは異なります。


また、ビジネスモデルのイノベーションは、一握りの天才の頭の中から突然ひらめくものではなく、それを理解する組織によるシステマチックな思考法であると近年多くのビジネスモデルのエバンジェリスト達によって言及されています。Apple創業者のスティーブ・ジョブズ氏の言葉を借りれば、「創造力とは、いろいろなものをつなぐ力である」となるでしょう。


欧州の先導的なビジネススクールであるザンクト・ガレン大学(スイス)の長年の研究によれば、過去50年間にわたる最も画期的なビジネスモデルを分析した結果、90%を超えるケースが他の業界からの既存アイディアとコンセプトの単純な組み合わせであることを発見し、55の典型的なビジネスモデルパターンとしてこれらを整理しています。注5) 有名なジレットモデル(本体ではなく消耗品で儲ける)もその1つです。


新しいビジネスモデルのアイディアを考える際、これらのパターンや他社のビジネスモデルをキャンバス上で検証してみることは有効な手段となります。次回からは、国内外の企業のビジネスモデルを数回にわたってご紹介していくことにしましょう。


最後にもう1つ。もし皆さんのビジネスが最近上手くいっていないとお感じであれば、その問題の周辺を詳細に分析する前に、ビジネスモデルキャンバスを活用してビジネスの全体像を検証してみることをお薦めします。


よく言われるように、問題の原因はその事象のすぐ近くにあるとは限らないのですから。弊社はサーキュレーション社を通じて、ビジネスのデザインに関する集合もしくは個社別ワークショップを開催していきます。是非お気軽にお問い合わせ下さい。


参考資料

注1)「IBM Global CEO Study 2008」による 注2)「BusinessWeek/BCG Innovation Survey, 2008」による 注3) 日本では翔泳社から日本語版が出版 注4)「Harvard Business Review, August 2011」を参考に作成。ノーフリル型とは、簡略化した最低限のサービスを提供する航空会社(no frills、無装飾の意) 注5)「The Business Model Navigator」by Oliver Gassmann 他

ビジネスノマドジャーナル編集部
専門家と1時間相談できるサービスX-bookを介して、企業の課題を手軽に解決します。業界リサーチから経営相談、新規事業のブレストまで幅広い形の事例を情報発信していきます。
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